小さいおうちのレビュー・感想・評価
全108件中、101~108件目を表示
あの「言葉」。
山田監督の「東京家族」に引き続きの作品。
先日、この映画の公開にからめて「東京家族」がTVにて放送されており、改めての感動を頂いたため期待を込めて映画館に足を運びました。
戦争への足音が大きくなる昭和初期の物語であります。
私自身、戦争を知らない世代であり主人公である「タキ」の親類である「健史」同様に教科書的な史実に基ずく時代しか見えてきません。(もちろんその当時をモチーフにした「映像」や「書籍」視点での知識はありますが)
この映画は題名にあるように「小さないえ」に住む家族を中心に物語は進んでいきます。
全体的に、小津映画的にトーンを抑え気味な印象をうけました。それでも「主人公」の悲しみが伝わってきます。
現在(平成)の「タキ」がテーブルに突っ伏して吐くあの言葉・・・彼女の人生の集約なのでしょうか?
実は私自身は、イマイチこの物語に引き込まれませんでした。
構成上?あまりにも沢山の登場人物とそれぞれの思惑が交差し、フォーカスすべきモノと観客側の身の置き所の居心地の悪さが原因のような気がしました。特に女中としての「タキ」の心情をもっと丁寧に深く描いていれば・・・。感情移入ができたのではとも思いました。
ネタばれになりたくないので、深くは書きませんが直接的な表現で「タキ」の心情を慮るのは先ほど記したあの言葉だけだったような気がします。
きっと監督的には、あえてそこはそうしました。という事なのかわかりませんが、個人的には消化不良でした。
前作の「東京家族」のように「言葉」や「しぐさ」でグッとくる作品もあれば、この作品のようにより抑え気味なトーンの作品もあるという事でしょうかね。
また、私自身がこの作品にイマイチ引き込まれなかったのは、戦争への足音が聞こえるこの時期で中心となる「小さないえ」の家族や取り巻く人々がある意味その時期の「富裕層」であり、庶民の生活からは一段上の生活を送っている人たちであり、この時代を描く作品としては稀であったように思いました。やはり庶民感覚ではないので「よくある庶民」(例えばNHK「ごちそうさま」的な?)のギャップも大きなファクターであったとも思いました。きっと私自身がこの時代を描くならこうでなくっちゃみたいな固まった意識があるんでしょうね。
俳優陣は正に現代の「山田組」オールスターで、演技は楽しめましたよ。
個人的には、木村文乃さんをもっと見たかったのですが、さすがは黒木華さん♪本当に良かったです。このキャスティングは大当たりです。
正にそこに「タキ」を見ました。
ほっこり
一人の老人の自叙伝という形を借り、その人生をリスペクトしつつ、昭和初期の時代を描きながら、ノスタルジックに描いた映画でした。
年老いた人にもそれぞれの人生があり、秘密があり、物語があるということを考えさせてくれました。
今さら取り返しはできませんが、母や父の人生について、もっと知っておきたかったと思いました。
山田監督は映画作り(脚本)が巧い
さすがに山田洋次監督は映画作りの名人と感じました。良くできた映画です。映画のメインテーマはまだ米軍空襲の来なかった戦時下の当時はどこにでもあるような日常生活から松竹映画らしく始まって、今では想像もできないような閉鎖的相互監視社会における経済的に恵まれた美しい婦人(松たか子)の不倫事件の顛末をその家に奉公していたお手伝いさんの目を通して映画的に面白く描いていました。声高ではないですが、戦争の悲劇性も十分に伝わってきました。松たか子はいい役者とこの映画で認識しました。
こんな女中さんいたらイイなあ
心地よい涙とともに見終えた。先ず女中さん通じて家族って何だろうかと暫く考えていた。昭和にはこういうとても家族思いの女中さんのいる家庭は本当にあったのは間違いない。次に個人的には冒頭の火葬場のシーンは黒澤明監督の生きるを思い出した。一体彼女はどんな人生だったのだろうかとの思いを馳せた。さらに歴史での事件からの感覚と実際の時代を経験した庶民生活からの感覚の違いが、お婆さんと若い人との会話から上手く理解出来た。また天井の裸電球付近からアイロンに電源をとっているシーンは昔を思い出した。まとめて言うと、静かながら良い緊張感に包まれた優れた作品に仕上がっています。
蛇足:松たか子さんの若奥様の香気は画面から充分堪能出来ました。
たしかな余韻が残る!
落ち着いた世界感、どっしり構えた構図で、人間が生きる姿を丁寧に描き出してゆく。
そこから声高にならずとも"戦争の愚かさ"をたしかに滲ませる。
布宮タキが抱えた深い悲しみと後悔と沢山の小さな幸せ。
キレイな奥様とその平和な家庭への憧れや尊敬、自身の未来への希望。
それらの象徴を赤い三角屋根の小さいおうちに凝縮させて、
戦争が無ければ積み重ねたであろう普通の生活をエンドクレジットに流す。
何とも言えない切なさを伝えながら・・・。
まったく感情を揺さぶられず
「永遠の0」に続いて残念この上ない映画だった。これでは感動できない。
すでに10年以上前から現代を描けば時代錯誤になってしまっていた山田洋次監督は時代劇なら、と思ったものの、戦時中を描いて時代錯誤にはなってないけど、エモーションは完全になくなっていた。セリフも感情表現もテレビ的でまったくついていけず。特に妻夫木の説明を継ぐだけの死んだような大学生ぶりは誰か注意できなかったのか。ハリウッド映画のトンデモ日本人みたいな奇妙な印象を受ける。おまけに不倫に走る松演じる奥さんも造形に奥行きがまったくなく、太い松の足を揉む黒木華のとこはちょっとドキドキしたが、肝心の松のドキドキがステレオタイプで、説明過多で、死んでいる。黒木も東北の田舎娘はぴったりでかわいいが、目撃者としても、想いを寄せる人としてもトキメキがなさ過ぎる。若いんだから、もっと何かあるだろう。監督が枯れてしまっているのだからしょうがないか。
セットを完全に使いこなす贅沢を許される監督であるにも拘らず(なんちゃって小津風味のところもありつつ)、徹頭徹尾説明のオンパレード。あげく、大粒の涙をノートに落とし、わんわん泣く倍賞千恵子を見る悲しさ。80歳くらいのお年寄りの生涯をかけた秘密の最後はもっと密かにできなかったのだろうか。先に泣き出されるとまったく泣けない。
「永遠の0」の三浦に比べ、妻夫木が我先にわんわん泣き出さないのはよかったが、正直、「永遠の0」も「小さいおうち」もNHKでリメイクしていただきたい。
中国人、韓国人に是非、観てもらいたい映画。
偏向した歴史教育を受けている中国人、韓国人、に是非、観てもらいたい映画です。戦時中の市井の日本人の姿を是非、知ってもらいたいと思います。当時の日本人は鬼でも獣でもなく、ごく、普通の人間だったのです。このことは、日本に限らず、アメリカでもドイツでもイギリスでも同じことが云えると思います。さて、肝心の映画ですが、松たか子の貴婦人然とした演技も良かったのですが、耐え忍ぶお手伝いさんを演じた黒木華が断然、素晴らしかったです。今後の日本映画界にとっての期待の星でしょう。映画の後半部分では会場の至る所で、歔欷が洩れていました。終盤、話の展開が駆け足になったのが惜しまれます。また、最後の最後に米倉斉加年が登場することにより、映画にずしりと重みが出ていました。☆ひとつ減らしたのは妻夫木聡と木村文乃の演技があまりにも軽かったからです。山田洋次さんはいつも若手の俳優の選定に苦心されているように見受けられます。
最後になりますが、ベルリン国際映画祭での健闘、祈っています。
全108件中、101~108件目を表示