小さいおうちのレビュー・感想・評価
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帯のお太鼓が…
原作で書かれている重要ポイントが完全に削ぎ落とされていて、非常に勿体ないと思いました。奥様=松たか子の行動の理由も子どものことも、映画ではまるで分かりません。だから単なる不倫というか、よろめき夫人の話になってしまい、あーあ、でした。年配の監督の限界なのでしょうか。
夫役が歌舞伎女形の孝太郎というのはいいキャスティングだと思いました。その点が唯一、原作にあって映画になかった重要点のヒントになっていました。昔の洋風のお家は素敵です。懐かしい。
松たか子は、演技力あり器用で美しい。男だったら歌舞伎役者になれたのにと、彼女も寺島しのぶみたいに思ったのかな。
おまけ
原作でも映画でも、奥様の帯のお太鼓の柄の位置が外出前と異なっていることにタキちゃんが気がついてドキッとするシーンがあります。私もドキッとしました。でも今さらながら落ちついて考えると、これは有り得ないことだと思い至りました。帯の巻き始め(テ)の左右は人によって異なりますが、帯でお太鼓になる箇所は名古屋帯であれ袋帯であれ同一です。でなければお太鼓にシワがついてしまうし、ここが「お太鼓」と帯の職人さんなり作家さんがお仕事するからです。だからあり得ないんです、原作も映画も!映画ではお太鼓の柄位置違いの帯を二本作ったんだと思います。でもこれがフィクションの面白さで、タキちゃんの心配が妄想として本当にそう見えてしまったんだろうと思いました。
もやもやしてしまう
扱う時代や話の展開は、分かりやすいものだと思うが、映画でやる内容としては、単純に物足りなさを感じた。それは、作品としてのドラマ性や価値観。
役者の演技は大したものです。ただ黒木華さんはハマリ役という印象が割合的に強く、好感が持てるが評価されるまでのものは感じなかった。
松たか子が黒木華を田舎へ帰る見送りの時に見せた最後の表情はとても人間らしく狂気的なものを感じられた。あれは何かのメッセージなのか。
20210324再見 私長く生きすぎたの、という苦しい思いの吐露に...
「小さいおうち」を観て・・
小さいおうち
昔の面倒くささ
戦争中の不倫話
総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
昭和初期の日本らしい控えめな不倫と当時の人間模様の話であり、それほどたいした主題でもないのに、描き方がしっかりとしていた。大きな波乱万丈の話でもないから登場人物たちをどう演じるかはとても重要だが、心の内側がしっとりと伝わってくる演技だった。原作は未読だが直木賞受賞作品だそうなので、そちらもしっかりとしたものなのかもしれない。
時子を演じた松たか子は流石で、板倉を訪ねた後で友人睦子の前で動揺する姿を隠そうとする場面は見物だった。布宮タキ役の黒木華も、役柄上はたいした見せ場がないわりに地味に良かった。一番幸せだった時代に残した罪悪感を表現した倍賞千恵子も安定した演技だった。室井滋等の脇役たちも丹念に周りを固めていた。
まるで節制と抑圧というこの時代を反映したかのような慎ましい演出は、不倫の姿をはっきりと見せることが無く淡白。濡れ場は一切無い。でもそれはこのような時代背景を踏まえてるし、肉体関係よりも心の動きを中心にしているのだから、この作品にはそう悪くもないと思う。だけど雷の音をきっかけに使って不意打ちの接吻をするのは、その瞬間の顔や唇を引き伸ばして撮影するくらいの演出はあってもいいのではないか。
『小さいおうち』は秘密の不倫の恋の話に隠された秘密の悲恋の話ですって話
劇中の妻夫木聡が「イマドキの若いやつはこんなしゃべり方しねぇよ」と批判されたりしていた作品なんですけど、僕にはその妻夫木聡のしゃべり方こそが「昔の映画ザ・ライド」的な効果を出してたんじゃないかと思って好印象でした。
お話もなかなかおもしろかったですよ。
僕はこの映画、「3人の人間が6つの愛に苦しんで、1つも成就しなかった話」だと思いました。
時子は「板倉」と「夫≒家庭」への2つの想いがあって、どちらも成就できなかった。
タキは「時子」と「板倉」への2つの想いがあって、どちらも成就できなかった。
板倉は「時子」と「タキ」への2つの想いがあって、どちらも成就できなかった。
不思議ですね、この映画のど真ん中は時子と板倉の恋のお話なのに、その後ろで板倉とタキの悲恋物語が完璧なまでにきっちりとコントラストを描いてますよ。
違う言い方をすれば、「時子の秘密の恋の話に隠された、タキの秘密の恋の話」ってことですね。
観客に対してすら、秘密を残している「小出し感」が切なくてよかったです。
ついでに坊っちゃんは「時子という母親」と「タキという仮の母親」への2つの想いがあって、タキとは戦争で生き別れ、時子には不倫で裏切られた悲しみがありました。
またついでに旦那さんは、「仕事」と「戦争」の話ばかりだったけど、戦争は出兵もできずに負けて、仕事は戦争のせいでダメになった。
人間はいつの時代も、なかなか思うようにうまくは生きられないし、最高ではなくてもそれなりの幸せを良しとして生きていかなきゃいけない。
そんなことをちょっと考えさせられる映画でした。
それぞれ
いい人たちが巻き込まれる
日本映画はDVDで済ますことが多いのです。
なぜか?そのスケール感なのかな。
でも、この映画は物語としての面白さや現代日本への教訓
いろんな意味でよかったです。
まず、登場人物全員がいい人なのです。
奥さんや彼氏、たきちゃんや旦那にしても悪い人はいません。
それなのに、なぜ日本が戦争に巻き込まれたのか?
はじめのうちは、大したこととは思っていません。
みんな日本が勝つと信じていました。
でも、だんだん状況が悪化していくことがわかります。
そんな経緯を見事に描いていました。
もちろん、奥さんと彼氏が惹かれていったのかもわかるような気がします。
たきちゃんの悔恨の情を倍賞さんはうまく出していました。
そして、奥さんと旦那は手をつないで死んでいったのです。
哀しい物語ではあるけれど、この場面を想像して救われました。
女中のタキが東京に出てきて働いていたモダンな赤い屋根のおうちの物語...
女中のタキが東京に出てきて働いていたモダンな赤い屋根のおうちの物語。年老いたタキが自伝小説としてノートに綴りつつ語っていく。昭和初期戦前の日本の在り方、主人公タキの想い、雇い主の奥様の不倫、雇い主の会社の部下との関係など、淡々としてはいるが細かくゆっくりと進んでいく。しかし飽くことなく自分もこの小さいおうちに住んでいるような、そんな感覚に陥った。日本が戦争へと一歩一歩近づいている最中、この小さいおうちでの生活がどれだけタキにとって思い出深かったのか、ひしひしと伝わってくる。
ゆったり
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