「小さなおうちの秘密」小さいおうち マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
小さなおうちの秘密
なんの打算もなく一途に平井家に尽くす純朴なタキ。初めて黒木華という女優がよく見えた。顔立ちもこの役と時代に合っている。
晩年のタキを演じた倍賞千恵子が、身近にいそうなお婆ちゃんの姿を醸し出し、若き日のタキのイメージを引き上げていることも確かだが、この作品の黒木華は上手い。
そして松たか子。これまでの作品でも見てきたが、異性を意識したときの色気を滲ませた顔の変化や仕草は素晴らしいの一言に尽きる。今回は、バイセクシャルな含みも窺わせる奔放さで純朴なタキを狼狽させる。
時代は支那事変から太平洋戦争へと向かっていくが、当時を生きたタキの経験を、聞きかじりの知識しかない若者・健史が頭ごなしに否定する場面が印象深い。皆がみな、平井家やタキらのように恵まれてはいなかったにしても、健史のように過去を一律に見ている若者の存在に少しびっくりした。
小さな家の普通の家族にも、その人らだけの歴史がある。それをじっと見続けてきたタキの一生もまた彼女だけの歴史なのだ。
小さなおうちには小さな歴史が詰まっている。
子供の頃に見かけた懐かしい小道具や家事の光景が懐かしい。
最後の手紙は、見つけただけでも話が完結するが、その後まで描いたラストの処理は微妙。タキを想う健史の心にもらい泣きもするが、間延びしてしまった感も拭えない。
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