「奥さまの秘密そして反戦・・静かに綴る女中さんの日記」小さいおうち 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
奥さまの秘密そして反戦・・静かに綴る女中さんの日記
2014年。監督:山田洋次。原作は中島京子の直木賞受賞作です。
昭和11年に田舎から東京に女中奉公に来た布宮タキ(黒木華)
奉公先の「小さい赤い三角屋根のおうち」の9年間は一生涯タキの心に、懐かしさと悔恨を
残すものでした。
お婆さんになったタキ(倍賞千恵子)が親戚の健史(妻夫木聡)に相談しながら綴るノート。
倍賞千恵子と妻夫木聡が実の祖母と孫のようで、心からほのぼのとしました。
でも口当たりはソフトですが、内容は重かったです。
タキが憧れる奥様(松たか子)の秘密と平井家の日常。
何より太平洋戦争に突入する日本の様子が、克明に綴られ「庶民から見た・・・それも田舎から来た女中さんの目に写った戦争」が、とても分かりやすかったです。
日本が満州に侵略して、まるで世界制覇を目論む今の中国みたいです。
真珠湾攻撃をして開戦すると、まるでもう勝ったようなお祭り騒ぎ。
そしてそして戦局は日に日に悪化して行きます。
そんな中、奥様は旦那様の会社の部下の青年(吉岡秀隆)と道ならぬ恋に気を取られています。
松たか子が本当に美しく着物姿が素敵でした。
(私はあのご両親から生まれたにしては不細工だ・・・などと思ってたんですよね、
不美人とか普通とか思ってたなんて、とんでもないです。お母様(藤間紀子)譲りの臈長けた美女ですね。
大豆田とわこ・・を見て、なんと魅力的なのだろうと、思いました。
今では日本を代表する美人女優と思っております・・すみません)
兎も角、奥様は若い青年によろめいてしまわれるのです。
そして戦局の悪化で、病弱な青年の吉岡秀隆までに赤紙が届くのです。
赤紙とは戦争への「召集令状」のこと。
その紙の色が赤かったからそう呼ばれました。
そして若い女中タキちゃんは、奥様に一世一代の嘘を付くのです。
若い女中さんが、奥様一家の幸せを願って付く嘘。
この嘘は後々、タキちゃんを後悔に引きずり込むことになります。
(60年後に思い出しても泣き崩れる程の後悔)
そして奥様一家を起こる不幸な出来事。
この映画は「反戦」とは一言も言いません。
なのに戦争の愚かさと不条理が、観るものにクッキリと伝わってきます。
原作の良さ、そして山田洋次監督の手腕でしょう。
観て良かったと思う作品でした。
琥珀糖さん、共感ありがとうございます。
最近の日本映画を殆ど観ていないので偏った観方ですが、松たか子さんには演技に迷いがない安定したものを感じます。それでいてミステリアスな役が合いますね。この映画の演技には感服しました。テレビドラマの傑作「カルテット」も良かったです。昨年は舞台「ラ・マンチャの男」で舞台演技と歌を堪能しました。吉岡秀隆さんは、山田監督お気に入りの俳優さんで抜擢されたと思うのですが、この役には合っていませんでしたね。そこが実に勿体ない。でも、最近作「ゴジラー1.0」は適役でいい味を出していました。
琥珀糖さんは妻夫木聡さんがお好きなのですね。「ウォーターボーイズ」は、彼の主演でいい作品でした。それとテレビドラマ「ブラックジャックによろしく」の演技が印象に残っています。優柔不断でお人好しの役柄から、最近は演技派に転換し努力も重ねていらっしゃる。そんな中で周防監督の「舞妓はレディ」では銀幕のスター役で登場して全く違和感がありませんでした。昔の佐田啓二のような美形スターの存在感、周防監督のセンスと彼の良さが奇麗に決まっていました。異性からも同性からも好感を持たれる個性は、貴重だと思います。
琥珀糖さん、原作飛ばし読みでざっと読み終えたところです。帯はあくまで細部。全体として構成も時間軸も当時の細かな描写も素晴らしくて本当によくできた小説だと再度納得しました。だから映画化されると聞いてすぐに映画館に行った気持ちも思い出しました。戦前、戦中と暗い世の中だったとよく言われるがそんなことはなかった、当時からお受験だってあったこともこの原作に書かれています。「細雪」に通じる都会のモダンな雰囲気にも私は惹かれたんだと思います。再読して、ご主人様は奥さまの恋の相手とは何の関係もなかったな、と思いました
琥珀糖さん、コメントありがとうございます。原作では二人の間にレズビアンのような関係性はありませんでした。タキちゃんは美しく優しい奥様を尊敬し崇拝しています。奥様は一度結婚していてその時の夫との間にできたのが、映画のあのお子さんです。だから孝太郎演じる夫は奥様にとって二番目の夫で子どもとは生さぬ仲です。タキちゃんはそのご主人様から男性的な匂いを全く感じないことに気がつきます。つまりご主人様はゲイで奥様とは夫婦の営みがないのでしょう。女盛りの奥様です。そこに若い男が現れた、ということです。もしかしたらその若い男性はご主人様の若いツバメだったのかもしれないしそうではなかったかも知れません。長々とごめんなさい
琥珀糖さん
みかずきです
コメントありがとうございます。
誤解がある様なので、補足します。
確かにレビューの終盤で、本作には、説明不足で分からないところがあるとしましたが、空白行を挟んで、最後の3行の冒頭で、
作為的に説明を排除し、映像表現から観客が想像するように仕向けている。
・・・・・映画の妙であり、それが山田監督の狙いであろう。と記述しました。
その部分を要約すれば以下の通りです。
説明不足で分からないところはあるが、敢えてそうしているんですよ。
観客が映像表現から想像するように仕向けているんですよ。それが山田監督の狙いなんですよ。
すみません。読観易くするために空白行を作ったことで、文章が分かり難くなってしまったようです。止む無く脚本から説明を切り捨てたのではなく、意図して説明を排除たのだと私は思います。
では、また共感作で。
ー以上ー
琥珀糖さん
みかずきです
共感ありがとうございます。
レビューにも書きましたが、
本作を観て、驚いたのっは、昭和10年代と現代が似ている点です。
我々が教科書や書物の知識で知ってる昭和10年代とは大違いでした。
読書だけはなく、実体験者の声を聞くことも大切だと痛感しました。
更に、昭和10年代との類似性を強調している点から、平和ボケせず戦争への危機感を持たないと昭和10年代みたいになるぞという現代への警鐘だと思いました。深読みし過ぎかもしれませんが。
最後に。
琥珀糖さんの作品レビュー件数、500件を越えましたね。凄いですね。
世の中には、沢山の作品があり、どんな作品にも良い所があることを知ってもらうのがレビュアーの役割だと思います。
では、また共感作での交流をお願いします。
-以上-