嘆きのピエタのレビュー・感想・評価
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自宅にて鑑賞。原題『피에타(英題;"Pieta")』。題名のピエタ(聖母)は本作に登場しないし、少なくとも("C.ミンス"とクレジットされた)J.ミンスの“チャン・ミソン”はそう思えない。時折フラフラ揺れるアングルやズームイン、ズームアウトを繰り返す落ち着きの無いカメラは昂った感情の現れだろうか。ラスト近く、罵倒し拒み続けた障碍者となったW.ギホンの“フンチョル”の抱擁にソッと手を添えるその妻、K.ウンジンの“ミョンジャ”とそれを屋外から見守る孤独な男の対比に本作のテーマが隠されている。65/100点。
・J.ミンスの“チャン・ミソン”に食べさせた物は翌朝、L.ジョンジンの“イ・ガンド”のズボンの左腿の辺りが汚れていたのがヒントだと思う。
・撮影は二台のデジタル一眼レフCanon製"EOS 5D Mark II"で、フルデジタル撮影され、その内、一台は監督自身が回したらしい。
・監督は10日間でロケハンを及び準備を進め、20日間で撮影を終え、その後の30日間で編集とポストプロダクションを施し、完成させたと云う。尚、予算はたったの13,000ドルで済んだらしい。
・鑑賞日:2016年7月2日(土)
激烈で見るに耐えないくらい凄い
物語のからくりが何となく途中で分かるようにさせて、それがまた辛辣な感情を生み出して、とにかく見ているごとに辛さが増していく激烈な作品だった。このような嫌な題材は、悲しいかな世の中にはたくさん存在するだろうけれど、この物語の創造性は並大抵のものではない。これほどまでにクライムな映画は皆無なような気がする。
引き摺られ
母親と偽り復讐の為に近づく女が原田美枝子に似ていてたまに岸本加世子がチラリ!?
主人公は吉川晃司みたいな骨格に体格!?
早い段階で母親では無いことや息子がワンスターなのが解ってしまうが敢えて解りやすい演出にしているのか?
180度様変わりな主人公に違和感すら感じてしまうがデートの場面での彼が可愛くも思える。
殺したい程に憎い相手なのに手でヌイてあげるのは理解に苦しむ!?嫌な顔して洗う訳だし。
ラスト母親の心情が揺れ動いている風にも捉えられるが本来の目的を行う。
嘆きのピエタ"復讐の為に行動する聖母マリア"は最後どちらに嘆いていたのか?自分自身にか!?
残酷‥でも切ない
息もできないもそうだったけど
取り立て方が残忍過ぎて見てられないとこも多々多く
この映画も最初はそんな感じで見ていて
30年ぶりに母親を名乗る女性が現れ
徐々に心を開いていくが‥
そのさきは切なさだけが残るというか
ラストがマジで~の連発でした
ずーと切なかった↓↓↓
悪魔を憐れむ歌
負債者を障害者にしてその保険金で借金を返済させる非道な取り立て屋のガンド。天涯孤独に生きてきた彼の前に、突然母親と名乗る女性が現れ…。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝くキム・キドク監督作。
当然信じられず、邪険に振る舞うガンド。
が、母親という女性は赦しを乞い、献身的に世話をする。
初めて知った母の温もり。次第に心を開き始める…。
年甲斐もなく母親に甘えたり、二人でデートしたり…。
負債者から悪魔と恐れられている男の童心のような一面。
序盤の取り立てシーンは胸糞悪いにせよ、“母の慈愛”をテーマに、あのキム・キドクが優しい映画を…?
いやいや、やはりパンチの効いた鬱映画だった。
中盤辺りで、ひょっとしてこういう展開じゃないかな、と少し察しがついた。
母が息子の取り立て先を記してあるノートを見て涙したり、息子の○○を激しく拒絶するように洗い流したり、何より息子の前で微笑みを見せた事が無い。
これは壮絶な復讐劇。
愛を与えて与えて、正体も明かさず、その愛を目の前で絶ち切る。
…その筈が、悪魔へ芽生えていた憐れみと慈愛。
悪魔も愛を欲していたのだ。
最後に知った衝撃の事実。
それでも母親の愛を欲す。
愛を知り、失った悪魔はもう…
甘えん坊
強烈だった。韓国映画好きだけどキム・ギドクは何となく難解でエグそうで避けて来たので今回が初作品。全然難解ではなくて息子と母親の心理描写に迫ってて面白かった。
母親はずっと泣いていて、息子はどれだけ粋がってても、母親の前では甘えん坊になり信じてた芯みたいな物も簡単にポキッと折れてしまうところになるほどなと納得した。
血の通わない冷徹なロボットが母親を通して人間に変わり悔いて奔走する様が良かった。
母親役の人の演技がスゴく上手かった。
台詞を言わなくても表情が全てを物語っていた。息子の母親に対する愛情と母性の深さに暗い話だけど温かい話でもあった。
10日で撮影したのもすごい。
特典映像の監督インタビューで「システムの中で生きることと常にバランスをとることに悩むけれど、人間の動物的な部分に惹かれる」と話していてまさにそれがこの作品の魅力かと思う。
最初に残忍なエピソードを重ねるので主人公の変化が少し単純な気はするけど、物語の深さに、観る人をあそこまでもっていってくれるならそこに時間をかける必要ないんだと思った。
終盤でタイトルがじわじわ効いてくる。
ギャグもさりげなくていいし、何よりガンドかわいい…セーター着たいとかかわいい‼︎
嘆きたくなる
天涯孤独で生きてきた男ガンド(イ•ジョンジン)の仕事は債務者に重傷を負わせその保険金で借金を返済させるという取り立て屋。ガンドの前に母を名乗る女が現れる。始めは疑っていたが徐々にかけがえない存在になってゆく。でもそれは女の計算しつくした演技だったのだ。
実は女ミソンはガンドに障害者にされて自殺した男の母親だった。狙いは自分を母親と信じこませ、そのうえで、ガンドを恨んでいる債務者に殺されたように見せかけて自殺して愛する人を失った苦しみを味わわせるという復讐劇だったのだ。
ミソンが誰かに殺されそうな一人芝居を見てガンドは自分を殺してくれと土下座までして偽りの母親をなんとか助けようとする場面はよかった。そんなガンドに息子を殺されたミソンも同情するが飛び降りて死んでしまう。
ミソンの遺言とおり松の木に遺体を埋めようとすると手編みのセーターを着たミソンの本当の息子の遺体が現れる。
愛を知り、ガンドは障害者にした男の家のトラックの下に潜り引きずられて死ぬことを選ぶのだ。
暗く悲しい話なのに見終わっても不思議に見てよかったと思えたのは、根底に母親の無償の愛の深さを描いているからか、と思う。
タイトルのピエタはミケランジェロのピエタをモデルにしていて、十字架から降ろされたイエス•キリストを抱く聖母マリア像であり、慈悲深き母の愛の象徴でもある。
映画中債務者の母達の嘆き悲しむ姿が多く見られた。タイトルも良いと思った。
最後のシーンは本当に心がえぐられる思いだった。
ラストが秀逸
自分でも意外だったが、本作が初キム・ギドク作品。
エグい作品は特に好んで観たいとは思わないが、韓国映画の『チェイサー』や邦画の『冷たい熱帯魚』『凶悪』など、観てみたら意外に良い作品は結構ある。(一度観たら忘れない。でも二度は観たくない的な…)
それらの作品にはエグい描写が必要なのだと思っている。
残忍さや非道さ、または異常な様を臨場感たっぷりに描くことで観客に刻み込んで行くのだろう。
エグさが売りだった洋画の『ソウ』を観た時の衝撃は凄かったのを思い出した。
それに比べれは本作はまだマシなのかも知れない。
とは言え本作はエグさが売りの映画では無い。あくまで話の流れのなかでの描写である。しかしそれはかなり歪んでいる。これがキム・ギドク監督の作家性なのだろう。
ひとつひとつのシーケンスを掘り下げていくとかなり変なとこや有り得ないとこがあるし、決してスマートな作品では無いが1本の映画として観ると意外に気にならなくなり、むしろ良い感じになるから不思議だ。
本作の衝撃はズバリ!ラスト。
この唯一無二のラストシーンは秀逸だ。
まぁ良く考えついたものだ。
これも一度観たら忘れない1本になりました。
作品の性質上もう一度観ると新たな見方が出来て良いとは思うが、でもやっぱり二度目は勘弁かな…。
観るとしても少し時間をあけてからだな…。
母と息子の変奏曲
母親は娘を亡くしたとしても、ここまでして復讐しようとするだろうか?
冷酷な取立屋で荒んだ暮らしをする息子は自分を捨てた母親をこうもあっさり(それなりのテストは課すものの)受け入れ依存するようになってしまうのだろうか?
誰かの息子でもなく、息子を持つ母親でもない私には、母親と息子の間の愛と憎しみについて理解することは難しい。
本当の母親だと信じた女は自分が自殺に追い込んだ男の母親だった。
復讐を誓う母親は、生まれてすぐに男を捨てた母親だと名乗って男の前に現れる。
母親を知らずに生きてきた男。
母親の存在を知り、彼の他人の母親と息子、家族に対する見方も変わっていく。
この作品では様々な母と息子の関係が変奏のように描かれる。
取り立て屋と復讐を誓う母親の擬似関係。
借金と不自由な身体を苦に命を絶つ息子と残された母親。
借金を抱えてビニールハウスで暮らすようになる夫婦。障害者となり妻に依存する夫。この二人の関係も母と息子の変奏なのである。
この作品には、現代社会の拝金主義、人間とお金の関わりに対する批判も込められているようだが、これはまた別の話ではないかと思う。
これは、残酷で普遍的な大人のための寓話。
もう一声、
鬼才(まさに文字通り!)キム・ギドク監督の、久々の長編劇映画。
いやはや…相変わらず情け容赦一切無し!の一本でございました!涙
「孤独」そして「復讐」。「信頼」と「罠」。と書いたところで、作品の根っこは「さよなら渓谷」と兄弟みたいなもんですな。
でも、こちらの兄弟は容赦がない分、より凶悪!!
激安人生の顛末とそれが巻き起こす復讐と恨みの連鎖を、激痛バイオレンスで激辛に仕上げております。
その描写と「楽」の部分との落差で、作品の深みを増すのがギドク・マジックですな…
とにもかくにも「痛くて胸に刺さる、でも分かる」…まさに大人向けの寓話作品です。
観客がピエタ。
「ピエタ」とは
十字架から降ろされたイエス・キリストを抱く聖母マリア像の
ことをいい、慈悲深き母の愛の象徴であるらしい。
いやいや、慈悲深いとかそういうレベルの映像ではなかったが、
不思議と残酷さは(映像の実態とは別に)物語には流れていない。
どちらかというなら悲劇だ。借金苦に喘ぐ工場主たちの実態と、
暴利で保険金を稼がせ返済させる主人公と被害者たちの関係。
どうにもならない、二進も三進もいかないという状況が観てとれて、
冒頭から胸糞悪い、気持ち悪い、悲惨、と、こちら側も堪らない。
非常に分かり易い映像で今作は見せているが(時代物のように)
不況に喘ぐ日本や諸外国のどこかで同じようなことが起きている。
保険金で償う。とは聞こえがいいが、障害者になってどう働く?
そんな手足でこれからどう生きていくんだ?が見てとれる状況に
まったく辻褄の合わない凄惨な選択が債務者の人生を狂わせる。
30年間孤児という天涯孤独を生きてきた主人公ガンドは、何を
考えるでもなく、債務者を取り立てては、家に帰って食事をする。
浴室の血生臭い映像は、彼の食事用の小動物の残骸である。
そこへ突然「あなたを捨てた母親だ」と言って現れる女。
物語に特異性はないので、この女が一体誰なのかは察しがつくが
しかしどこまでもこの女はガンドに尽くしまくるのである。
ガンドの心は孤独から解放され、母親に傾き始めるのだが、
物語はガンドより先に女の正体と今回の事件の真相を観客に示す。
ラストに向けて、各々の心が動き始めるのはここから。
天涯孤独。も、子供を失った遺族。も、やり切れない想いは同じ。
悲劇を背負った者同士が心を通わせるかと思いきや、図らずも
決して相手には伝わらないままで終わる。
真相を知ったガンドが最後にとる行動は、債務者(被害者)の妻が
彼に向って放つ言葉通りになったが、あまりに救いのない結末。
嘆くのは観客。監督は、観客をピエタに据えたかったのかしら。
(あぁ無情。哀しくてやりきれず。何をどうすれば良かったんだか)
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