劇場公開日 2013年6月15日

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「期待値が高かったので、残念!」嘆きのピエタ トコマトマトさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0期待値が高かったので、残念!

2013年6月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

単純

難しい

カルチャーマダムが集う渋谷bunkamuraの中にあるル・シネマにて6月18日に鑑賞。
ここは火曜日が1000円とかで、朝一番の回を目指していく。席は取れたが、上映前に満席。すごい賑わいだった。この映画館、カッコつけてるくせに前の席にちょっと背の高い人間が座るととたんにスクリーンが見えにくくなる、要注意の劇場。行きたくない劇場だ。

それでも客が多かったのは各紙誌でも高評価で、昨年のベネチアを制した作品だからかな。

それなりに期待して見たが、僕の評価は上記のとおり。

分かりやすくいえば、「韓国の北野武」とも言うべき人で、10本ほど作品を見てきた、自称ファンの僕としては★4つはつけたかったが、世評ほどできがいいとは到底思えない。
去年公開されたドキュメンタリー「アリラン」のほうがずっとよかった、胸を打った。

ただ、考えてみれば、彼の旧作でも、僕にとってよかったのは「春夏秋冬そして春」(2004年日本公開)くらいで、以降の作品はそれほどの感動は覚えていない、と思う。

さて、本作は…
孤独な借金の取立て屋の男と、その母を名乗って押しかけてきたなぞの女がめぐる世界を描く。
この設定は非常に興味を引かれたが、韓国社会の暗部、「韓国の汚いところ、貧しいところばかり撮って世界に発信している」的な部分もいいにはいいんだが、もうそんなものに頼らずとも、韓国は立派な国なのである。
別のほうから光を当ててみてもいいのではないか。
その部分がどうにもしつこくて、もっと描くべきものが描かれていないような気がした。
基本、ファンタジーなんだし、もうちょっと笑える、クスリとさせる味付けもほしかった。

ベネチアで賞を取れたというのは、まだ韓国が後れた国と思われているからではないか、とも思ってしまう。
暗い、暗すぎるのである。
惜しい、とも思う。

キム監督が脚本・制作を担当して脱北者を主人公にすえた「プンサンケ」なんかはみずみずしい演出でよかった。

ああいうのを見たいが、それができないなら、「春夏秋冬」的な映像詩か、ドキュメンタリーのほうを見てみたい。

監督は僕とほぼ同世代。お互いに枯れるにはまだまだ早い、がんばろう!

町谷東光