「ピエタ:亡きイエスの骸を抱く聖母マリア」嘆きのピエタ resuwisshu311さんの映画レビュー(感想・評価)
ピエタ:亡きイエスの骸を抱く聖母マリア
ネタバレ
見終えてなるほどのタイトル。これも一つのピエタ像(イメージ)だったわけだ。。
韓国工業団地底辺層。高利の借金に苦しむ債務者から情け容赦なく金を取り立て、払えなければ文字通り〝かたわ”にしてまで保険金をせしめる過酷な借金取り立て屋。
幾人も彼に手や足を駄目にされ、残された家族ともどもさらなる絶望の最下層生活に追いやられる。
ところがそんな一人身の彼にいきなり母親と名乗る女が現れ、最初は相手にしなかったものの、次第に彼女の言い分を信じ、本物の母親として受容するに至る。
そのせいか暖かい人間味が彼の中に生じてしまい、非常冷酷な借金取り立てができなくなる。
逆に身内の存在を知った〝かたわ”にされた債務者が彼の「母親」を人質に取り、彼に復讐を果たそうとする・・・・
というのが途中までの流れ。
まるで六道輪廻・餓鬼道の世界を垣間見るような絶望的気分に陥る映像。ここまで救いようのない徹底的な無慈悲の世界は初めて見たような気がする。
そしてかなり訳アリと感じさせる「母親」の出現が悪魔と罵られる「彼」に及ぼす微妙な影響、心理の柔軟化はこちらが痛々しいと感じるほど。
その「弱点」を見透かし彼に仕返しをしようとする彼の被害者の登場はまさしく因果応報。
ついに「母親」の真の目的が明かされオープニングシーンと結びつくわけだが、ここで種明かしが早すぎるのではないか? と感じてしまったものの、そこから更なるクライマックスで監督が〝ピエタ”と名付けたタイトルの意味がおぼろげながら浮かび上がってくる結末、全体構成になかなかの感銘を受けることになる。
ただラスト。あれがもし「刑場に牽かれるイエス」を模したものだとするなら、それは違うだろうと感ず。あれでは自動車の運転手が単なる殺人犯として処罰を受けることになってしまうだけだから。(遺書でもない限り言い訳や釈明は認められそうもない)
被害者やその家族が「彼」に対する恨みを清算できる別の相応しい手立てがあったはずとそこが惜しまれる。
しかし、自作自演をしながら「彼も可哀想・・・」とかりそめの母親が慈悲心(又は罪の意識か)から涙ながらに語る場面こそ、私にとってのクライマックスでしたね。
総評四つ星
2008-2