ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区のレビュー・感想・評価
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オリヴェイラの跳躍
1作目アキ・カウリスマキ。
2作目ペドロ・コスタ。
3作目ビクトル・エリセ。
4作目オリヴェイラ。
何とも濃いメンツによるポルトガルを舞台にしたオムニバス。
2作目・3作目、どちらも「実際の思い出を語らせる」形態。やっていることは実は全く一緒。にもかかわらず180度違うタイプの映画になっている。そこが凄いなあと思った。どちらもインタビュー形式とも言えるが、その枠組みを越えて、半ドキュメンタリーとファンタジーの境を彷徨う。あくまでも個人の、その人しか体験出来ない特有の思い出だが、確固たる力を持って迫ってくる。
2作目『スウィート・エクソシスト』。ポルトガル・カーネーション革命に巻き込まれた出稼ぎ労働者の苦難の思い出が語られる。多くの人に歓喜をもって迎えられた革命も出稼ぎ労働者にとっては違う意味を持っていた。亡霊のようにつきまとう思い出を祓う(エクソシスト)ことは出来るのか。祓っていいものなのか。
3作目『割れたガラス』。幼少期(12歳くらい)から紡績工場で働いてきた老人たちの思い出。貧しいながらも、一家のそして国の経済を支えてきた自負。革命により景気が前進した様子。だが、歴史は流れ他国の安い労働力に押され閉鎖される工場。
2・3作目ともに、モノを作る人、労働者の「思い出」だった。
そして4作目『征服者、征服さる』。そこにはもう、モノを作る人はいない。ポルトガルを訪れる観光客の様子が延々と映し出される。
「モノを作る人」から、「モノを消費する人」が訪れる国へ。
この変化を古都の石像がじっと見つめている。
石像の顔と、観光客の俯瞰(石像の目線で撮られた)のショットが繰り返される。それだけのことだが虚を衝かれる。その強烈さたるや。
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「1ショットの強烈さ」でいったら、近年ペドロ・コスタに敵う人はいないと思っていた。本作におけるペドロ・コスタも素晴らしい(これの長バージョン『ホース・マネー』はもっと素晴らしい)。
だが、その強烈さを、飛び越えるオリヴェイラ(当時103歳)のショット。ただただ唸るしかない。
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