劇場公開日 2012年11月17日

「本作は「シン・ゴジラ」のいわば導火線だったのです」巨神兵東京に現わる 劇場版 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0本作は「シン・ゴジラ」のいわば導火線だったのです

2022年8月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

もともとは東京都現代美術館で2012年に開催された「館長 庵野秀明特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」展の展示品のひとつして公開されたものです

その展覧会の館長を務めた庵野秀明さんの企画
監督は樋口真嗣さん

もちろん「風の谷のナウシカ」のスピンオフ作品です
巨神兵の原画を描いたのは若き日の庵野監督であるのは有名な話です

同年11月の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」と同時公開もなされ、そのDVDの特典映像として手軽に現在も鑑賞可能です

 庵野秀明監督の商業実写映画への挑戦はこうなります

1998年 ラブ&ポップ デジタル撮影
2000年 式日 フィルム撮影
2004年 キューティーハニー アニメと実写の融合

アニメと実写の違い
頭のなかで浮かぶ構図をそのまま原画にしてそれを動かして絵に演技をさせること、それと実写では何がどう異なるのか
まずデジタル撮影にいち早く取り組み、 次にフィルム撮影をしてみる
一体何が異なるのか、単なる記録媒体の違いではない、成果物としての映像にどのような差異が生まれるのかを確かめたのだと思います

それを咀嚼した上で、合成などの特殊効果との融合の方法論を実写で確かめようとしたのが「キューティーハニー」では無かったかと思います
つまり庵野監督が本格的に実写に向かう為の一連のスタディーだったのだと思うのです

そして2012年の本作
この2012年という年に注目したいと思います

確かに展覧会のための展示作品では有りますが、これは映画関係者に向けたショーケース作品だったのだと思います

アニメと同様のクォリティーで実写の映像作品を撮れる方法論の準備は出来た
いつでも本格的な実写作品のオファーを受けられる
例えば本作のようなものを自分に長編実写映画で撮らせてみたいとは思いませんか?

そう言う庵野秀明監督からのメッセージだったように思います

2012年9月には、2014年公開のギャレス・エドワーズ監督のゴジラの製作発表が正式に行われたのです

本作は2012年7月に展覧会で公開されました

本作はギャレス・ゴジラの製作発表に2ヵ月先行しています
しかしハリウッドゴジラ第2弾の企画が進行中の噂はだいぶ前から流れていて秋にも正式発表があるとみられていたのです

ハリウッドゴジラもいいけど、一度自分にやらせてみませんか?

そのような東宝に向けてのラブメッセージだったのでは無いでしょうか?

東宝としても、エメリッヒ・ゴジラのトラウマの前例があります
2014年公開予定のギャレス・ゴジラが上手くいくのか一抹の不安があったはずです
リカバーできる策は考えておく必要があったのだと思います

そして2014年、ギャレス・ゴジラの公開を迎えたのです
予想以上の良い出来映えで興行も大成功でした
ゴジラはいまや世界的な金のなる木のコンテンツとして蘇ったのです
ハリウッドでのシリーズ化の話もでて、モンスターバースに発展していきます

日本国内でもゴジラの新作の製作をとの声がでるのは当然です

では誰に撮らせるのか?

もちろんそのとき誰の頭にも本作の映像が浮かんだと思います

庵野秀明と樋口真嗣のコンビしかいない!

本作は、「シン・ゴジラ」のいわば導火線だったのです

蛇足
2021年秋から「庵野秀明展」が、全国各地を巡回して開催中です
東京展、大阪展は既に終わり、2022年8月現在は山口県立美術館で開催中です
庵野監督の生地の宇部市には1時間強のところです
まだ未見の方は是非行かれることをお勧め致します
9月23日からは新潟で開催されるそうです

あき240
CBさんのコメント
2022年10月16日

素晴らしいレビュー、ありがとうございました。
> 庵野秀明と樋口真嗣のコンビしかいない!
同感。

CB