「今更ながら初視聴」アナと雪の女王 547Tさんの映画レビュー(感想・評価)
今更ながら初視聴
フルで見た初めてのディズニー作品であり、セオリーなども特によくわかっておりません。そのことを前提として感想を述べたいと思います。
『アナと雪の女王』は映像美や音楽が際立つ作品です。特に「Let It Go」のシーンはキャラクターの感情を視覚的にも音楽的にも表現した場面として称賛します。また、エルサの孤独やアナの無鉄砲さといった個性が、物語のテーマである「自己発見」と「受け入れ」に結びついている点も評価できます。さらに、北欧神話を彷彿とさせる世界観や氷と雪をテーマにした舞台設定は、とても魅力的です。
一方で、ストーリー構成やキャラクター描写において、多くの課題が残る作品だと感じました。特に、オラフの存在が大きな疑問点です。彼はギャグ要員として挿入されているものの、そのギャグが物語にほとんど影響を与えず、むしろストーリーのテンポを損なっている印象が強いです。そのことを補うだけの必要性があまり感じることができないというのが正直なところです。例えば、オラフのギャグシーンや不必要な時間稼ぎに見えてしまった描写を削り、その尺をエルサやアナの内面描写、もしくは姉妹の関係性の掘り下げに使っていれば、より深い感動を与える作品になったのではないかと感じます。
また、ハンス王子のキャラクター設定も中途半端で、彼が裏切り者であることが明かされる展開は唐突で説得力に欠けます。悪役としての狡猾さやカリスマ性が十分に描かれないため、驚きや納得感が薄く、ただストーリーを動かすための装置として利用された印象が否めません。もし、序盤から彼の言動に少しでも怪しさや伏線が仕込まれていれば、このどんでん返しがもっと効果的に感じられたでしょう。主にエルザへのヘイトを一身に受けていたこともこのシーンを薄めてしまっています。
さらに、スヴェンやクリストフとアナの関係性も描写不足で、特にクリストフの恋愛感情が観客にうまく伝わりきっていません。石のトロールたちの歌など、微笑ましいシーンにするための工夫は感じられるものの、肝心の感情描写が浅いため、「このキャラクターは何を感じているのか」という共感が得られず、観客が感情移入しにくい展開となっています。
また、序盤の駆け足感や中盤以降のテンポの悪さも目立ちます。エルサが突然アナを拒絶し、その直後に氷の魔法で暴走してしまう展開は、物語上重要なターニングポイントですが、エルサの葛藤やアナの驚きが十分に描かれず、ドラマ性が薄いまま進行してしまいます。一方で、不要に感じるギャグシーンや間延びした展開に尺を割いているため、観客として「その時間をもっと必要な描写に使えたのではないか」と感じてしまいます。
総じて、『アナと雪の女王』1作目は、映像美や音楽の完成度が高い一方で、物語全体の構成やキャラクター描写の不足が目立つ作品です。オラフのような役割の薄いキャラクターや唐突なストーリー展開が足を引っ張っているため、もう少し丁寧にキャラクターの感情や関係性を掘り下げる工夫があれば、より完成度の高い作品になったと感じます。学生時代に見ていれば感想が違ったものになったでしょうか。