「素晴らしい音楽と、愛らしいキャラクター。そして大味なストーリー。」アナと雪の女王 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい音楽と、愛らしいキャラクター。そして大味なストーリー。
自らの持つ魔力に怯え、国中を氷漬けにしてしまった王女エルサと、彼女を助けるためようとする妹アナの姉妹の愛を描いたディズニープリンセス・アニメ。
雪の女王エルサの日本語吹き替え版の声優に、『ブレイブ ストーリー』でも声優を経験していた松たか子。
魔法の雪だるまオラフの日本語吹き替え版の声優に、『ALWAYS』シリーズや『モテキ』に出演していたピエール瀧。
👑受賞歴👑
第86回 アカデミー賞…歌曲賞と長編アニメ映画賞の2冠を達成❗️
第71回 ゴールデングローブ賞…アニメ映画賞!
第67回 英国アカデミー賞…アニメ映画賞!
第41回 アニー賞…長編アニメ映画賞!
第9回 オースティン映画批評家協会賞…アニメ映画賞!
第38回 日本アカデミー賞…最優秀外国作品賞!
『2』が劇場で公開されているこのタイミングで本作を初視聴。
初めてとはいえ、やはり話題作ゆえ内容はなんとなく知っていました。吹き替え版での視聴。
本作の特筆すべき点はやはり音楽でしょう。
ディズニーアニメらしいミュージカルシーンが随所に見られますが、そのどれもが圧倒的なクオリティ!
有名な「レット・イット・ゴー」は素晴らしかったですが、姉妹のすれ違いを表した「雪だるまつくろう」や、アナのワクワクする気持ちを歌った「生まれてはじめて」なども大好きです。
2人のプリンセスによるデュエットなどもあり、他のディズニー・アニメーションと比べても明らかにミュージカルに力を入れています。それが成功の要因なのでしょう。
素晴らしい楽曲の数々を鑑賞するだけでも本作の価値は十分にあります。
神田沙也加さん&松たか子さんの歌唱力が素晴らしかった!
魅力的なキャラクター達が登場しているのも良かった。
ディズニー初のダブルプリンセスであるアナとエルサ。
アナは活発でおてんば。周りが見えないところもあるが、勇敢な性格。
エルサは大人しく内向的。自らの持つ大きな魔力を恐れ、他人を寄せ付けない臆病な性格。
この2人は非常に対称的なキャラクターとして描かれており、そこから生まれる対立と和解が物語を動かします。
エルサの持つ魔力は彼女にとってのハンディキャップのようなものであり、それをありのままに受け入れること、そしてそれを周囲にありのままに受け入れてもらおうとすることが本作のテーマであると言えるのでしょう。
山男のクリストフや雪だるまのオラフも、見ていて気持ちの良い楽しいキャラクターです。
特にオラフが面白くて可愛い!声優のピエール瀧の演技も素晴らしかった。いや、ほんとに勿体ない…
音楽やキャラクターが優れているので観ていて楽しいのですが、シナリオは正直もうちょっとなんとかならなかったのか?と思います。
まず、ヴィランズの描き方が弱すぎる。良い人だと思っていたハンス王子が実は…。というのは良いのですが、その豹変ぶりがあまりに突然すぎる。
国を乗っ取ろうとはしましたが、作中あんまり悪いことしてないんですよね。
吹雪に襲われるアレンデールで、城の物資を住民に分け与えたりしてたし、普通に有能な王子なんじゃないの?
エルサを殺そうとしていたが、それならエルサの氷の城に乗り込んだときに、ボウガンの邪魔をしなければ良くない?とか思ってしまう。
観客を驚かせようとするあまり、前の展開との齟齬が生まれている気がします。
あと、クライマックスでのアナの心の氷を溶かす場面。これまでのディズニーアニメーションでは、「愛」といえば男女の愛のことでした。
本作は姉妹の愛こそが呪いを解くカギとなっています。
多様な愛を描き出すのは良いのですが、その描写の仕方がお粗末。吹雪の中を駆けてきたクリストフが馬鹿みたいに見えます。
アナとエルサの愛、クリストフからアナへの愛、オラフからアナへの愛と、本作におけるアナに関係する「愛」は複数あるのですから、それをクライマックスの展開に上手く組み込むべきだったのでは?
従来のディズニーアニメーションで描かれてきた、出会ったばかりの王子と結婚するという展開や、キスにより目覚めるという展開を、現代の価値観に合わせてアップデートしている画期的な作品であると思いますが、新しいことをしようとするあまり上手くいっていないところも見受けられる。
とはいえミュージカルシーンは素晴らしいし、良いキャラクターがたくさん登場する楽しいアニメーションなのは間違いないです。流行ったのも納得!
今回、改めて見て、いい作品だなあと再び実感。
確かにハンス王子の豹変ぶりはビックリでした。
今回は吹替で見たのですが、吹替も素晴らしいですね。
映画はその映画そのもので評価したいとは思いつつ、やはり神田さんのことを思うと、胸が痛くなりました。役者さん(かつ歌手)として、こんなに素晴らしい作品を残せたのに・・・と、つい思ってしまいます。