「久々の和製本格SFを期待したのだが」シャニダールの花 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
久々の和製本格SFを期待したのだが
もっとSF色が強いとかマッドサイエンスな話かと思って観たら、どちらでもなかった。勝手に「月に囚われた男」的な雰囲気を持った作品をイメージしていた。
旧石器時代のネアンデルタール人の発掘場所のひとつ、イラクのシャニダールで骨格の周りから花弁が見つかり、遺体に花を添えたものであるという学説から派生したストーリー作りになっている。人が心を持った瞬間だというのだ。
胸に咲いた花の発育と提供者の心の状態がリンクするのは、心=胸という分からないでもない発想だが、やや芸がない。
そもそも、なぜ女性にしか芽吹かないのか、なぜ彼女らが選ばれたのか、いったいどんな薬品の開発なのか、一切説明がない。
これらの謎解きが無いのでSFとしては不十分な内容になる。
研究所の所長が真実を隠して研究所の存続を図っているようだが、これも狂気というほどではなく、マッドサイエンティストとは程遠い。
植物学者・大瀧にアシスタントとして就く新人セラピスト・響子が花の魅力に取り憑かれていく過程もあっさりしていて、結局この作品が語りたかったのは何なのかよく分からないまま終わってしまう。
せめて響子にはもう少し色気のある女優を使ってほしかった。狂った愛にもならない。ギターだけは狂ったように鳴り響くが・・・。
もしかして、人が人である原点が心だとして、その心の自然回帰の謎を描こうとしたのであれば、なおさらSF作品として成立させてほしくなる。
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