「真っ白な年表(人生)なんて無い」四十九日のレシピ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
真っ白な年表(人生)なんて無い
タイトルに“レシピ”とあるから料理がキーとなる映画かなと思ったら、そうではなかった。
妻を亡くし意気消沈の良平の下に、亡妻を知るフリフリお洋服の少女イモがやって来て、面倒を見る。さらに、夫の浮気で離婚を決意した娘・百合子も戻って来て…。
“レシピ”とは、亡妻・乙美が遺した家族再生の手作りレシピ本。
タナダユキ監督が、心に傷を負った家族が新たな一歩を踏み出すまでを温かく描く。
レシピに書いてあるのは、四十九日に大宴会を開いてほしいという望みや、料理や掃除の仕方。
良平にとっては妻の存在、百合子にとっては母の愛、居なくなって改めて痛感する。
百合子と乙美は実の母娘ではない。父の再婚相手。
小さい頃は馴染めず、今は後悔している事もあるが、二人には共通点も。
婚期が遅くなった乙美は子供を産まなかった。
百合子も子宝に恵まれなかった。(これが夫の浮気と離婚の原因)
四十九日の大宴会で、乙美の年表を作る事に。
が、乙美の年表は真っ白。
子供を産まなかった女の人生は真っ白なのか…?
大宴会当日、乙美を知る人慕う人が続々やって来て、年表に思い出を書き込んでいく。どれも他愛のない出来事だけど、みるみる埋まっていく。
映画の中で、「子供を産んだ女が必ずいい母親になる訳じゃない」という台詞があった。
乙美は子供を産まなかったけど、良き妻、そして良き母だった。
百合子も子宝に恵まれなかったが、おそらく良き母になっただろう。それを思わせるシーンもある。
自分の年表が真っ白になる事なんてない。
永作博美は安定感のある好演。
石橋蓮司も不器用な父を好演。地声がデカくておっかない雰囲気だが、妻が遺したレシピを見ながら掃除をするシーンは何だか可愛らしい(笑)
原田泰造もすっかり俳優だ。
故・淡路恵子はズケズケ物を言う伯母がハマり過ぎ。その存在感に、改めて合掌。
キャストで特に印象残るのは、イモ役の二階堂ふみ。
まるで秋葉原に居そうな女の子だが、実は不幸な背景。それを天真爛漫な明るさとキュートさで多い隠し、映画にもいいスパイスとなっている。
毎回毎回印象が変わり、同世代屈指のカメレオン女優!
日系ブラジル三世の青年役の岡田将生はちょっと無理が…??
そして、乙美役の荻野友里に触れずにはいられない。
全く知らない女優だったが、その優しい笑顔と温かな雰囲気は忘れられない。