「繋がる温もり。」四十九日のレシピ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
繋がる温もり。
原作は未読だが、NHKドラマを観ていたので内容は知っていた。
もう一度映画版で観たくなったのは監督がタナダユキだったから。
この風変わりな感動作をどんな味付けにするのか楽しみだったが…
観終えて、ん??あれっ??
これ、タナダユキか…?と思うほどにアッサリとした演出が続いて、
個人的にはとても意外だった。
もともといい話なので悪くはないが、監督作としてはやや期待外れ。
そんな感じで劇場をあとにした。
今作のレビューの幾つかにも書かれていたけど、
乙美の若い頃を演じた荻野友里の演技がピカイチだった。婚期を
逃し、子持ちの頑固な男に嫁ぐという苦難をひたすら健気に支え、
自分に懐かない子供をあやし、最期までいい「おっか」だった乙美。
そんな乙美が残したレシピを元に物語が展開していくのだが、
やはり乙美のキャラクター(のちに年表で第二の感動が迫るせいか)
表現自体を少なめに…ということだったのか、あまりに素っ気ない。
乙美の喜びや悲しみは、遺された可愛いイラストのレシピに登場、
良平と百合子を温もりの境地へと導く。
気になったのは(原作通りなのだろうが)
子供のいない女性は…という表現がやたらに多いことである。
子持ちには到底分からない苦しみが描かれているのが分かるが、
そのことばかりにとり憑かれている主人公が見るからに不幸で辛い。
女に生まれたからには…とはいっても、そこは各々の人生や運命が
多分に作用する。子供を虐待死させるような家庭に、どうして子供が
次々とできてしまうのか、という矛盾さえ浮かんで苦しくなる。
しかし本作では血の繋がり以上に、繋がり合おうとする人間同士が
互いに手を携えて物事をやり遂げる前向きな姿が胸を打つ。
完璧な人生なんてどこにもない。過去を変えることなんてできない。
ならばこれからの人生をどう生きよう。そこなんだよ、と納得できる。
(頑張れ!遺された家族たち。若者たち。おっかが見守っているよ)