やくたたずのレビュー・感想・評価
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自宅(CS放送)にて、同じ監督の『Playback('12)』に続き連続して鑑賞。撮影・編集・脚本・監督と熟す三宅唱の片鱗を覘かせる長篇デビュー作。全篇モノクロで、70数分と云う短い尺。粗削りな画面乍ら、多くの場面で登場する白い雪と学生服を始めとした登場人物達の黒っぽい衣装や黒く潰れた陰影がコントラストをなす為、演者の存在感が際立ち、その内面や心情を切り取った様な印象を受ける。タイトルコールでは、"GOOD FOR NOTHING"とサブタイトルがあり、単純な英訳を超えた意味を感じさせる。65/100点。
・不器用で行き場の無い怒りや狂気を抱えた三人の若者を端的に表した様な本作は、この映像作家の世界観やモチーフに直結している様に思え、オリジナリティの高い感性が垣間見えると同時に後の躍進を予見させるものがある。本作が合わないと感じた人は、恐らくこの先作られるであろうこれからの新作とも相まみえる事が出来辛いのではないだろうか。
・本作の最大の特徴は、そこかしこから漂う粗雑で未洗練乍らも伝わる個性であり、未完成であるが故の引力にある。これは或る意味、欠点とも見えるが、そこに魅力を感じたなら、この監督の作品群を追いたくなり、虜になってしまう。
・粗暴な“ガン”ちゃん事“岩間賢太郎”の玉井英棋、強い意志を感じさせる目力を持つ“三沢哲雄(テツオ)”の柴田貴哉、控え目乍ら静かな狂気を湛える“谷大輔(タニ君)”の山段智昭、“中川次郎”の足立智充、“伊丹雄一”の櫛野剛一、“中川英治”の南利雄等、独特の雰囲気を示す役者が脇を固める。この監督は、演者を使うのが上手い。
・鑑賞日:2017年3月29日(水)
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