「不幸のなかにあるかもしれないひかり」さよなら渓谷 xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)
不幸のなかにあるかもしれないひかり
モスクワ映画祭で審査特別賞を獲ったこの作品。
前から気になる映画ではあったが、やっぱり、その受賞が
背中をおしたことには間違いない。土曜日に行ったのだが、
ほぼ満員の盛況。こういう映画にしては珍しいのではないか。
女の深い絶望。それでもかすかな生きたいというひかり。
取り返しのつかない罪を犯してしまった男の悔恨と希望。
一見ささくれ立っている男と女の光景が、荒い粒子の画面に
合っていた。抱き合うときだけ、一瞬、二人を解放区に誘う。
でも、湧き上がってくるどうしようもない感情に、
ある時は男を絶望のかなたに落しこむ。
でも、許してしまう。
女の絶望感をわかっている男だから。
許してくれた女に、男は幸せを求めようとする。
でも、そんな幸せを女は拒否する。
不幸から逃れるのを拒絶する。
絶望の中で、憎悪する自分と愛したい自分。
一体、どっちに転ぶんだこの物語、この二人。
どっちにいくかわからない、そんな人間の揺れ動きが
この映画のテーマではないかと思った。
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