「千年後も人間の営みは変わらない( ̄- ̄)」千年の愉楽 初台験さんの映画レビュー(感想・評価)
千年後も人間の営みは変わらない( ̄- ̄)
交通事故で急逝した若松孝二監督の遺作。
『エロティックな関係』
『寝取られ宗介』
『完全なる飼育 赤い殺意』
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
『キャタピラー』
『海燕ホテル・ブルー』
『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』
と観てきたけど、全体を通して言えることは・・・
タイトルが長い!!!!∑(゜∀゜)
だから「あ~あの映画観たし内容も覚えてるけど・・・タイトル何だっけ??(*゚Д゚) アレ?」ってなることが結構ありますな(;´∀`)
まあそれは置いといて(つ´∀`)つ
もう1つは「台無し」感だと思う(・∀・)ウン!!
「こんなはずじゃなかったのに・・・」感と言ってもいいかも知れないけど、それまで努力してやって来たこと社会情勢や人間関係の影響で全部台無しになっちまうという落ちの映画が多い気がする。
例えば『キャタピラー』は江戸川乱歩の『芋虫』が原作だけど、日中戦争に行って四肢をなくして声も出なくなって帰還して軍神と崇め奉られてる旦那を献身的に支える奥さんが、旦那がインポになっちまった途端・・・という話
『海燕ホテル・ブルー』は、出所した男が自分を裏切った男に復讐しようとするがある女に会ってからどんどんおかしな方向に向かって行ってしまいには・・・という話。
『11.25自決の日』は、有事の際には自分たちも決起するという意志から民間の防衛部隊の盾の会を結成した小説家の三島由紀夫が、どんどん同志が離れて行ってしまい、熱心と言うか狂信的なまでの民族派学生にほだされていくうちに終いには・・・という話。
だから今回も落ちは「台無し」ってことになっちまうのかなとは思ってたけど、例に漏れず大どんでん返しが待ってましたよ(゚∀゚)アヒャ
今回の映画は若松監督の遺作で、寺島しのぶ、井浦新、高良健吾、並木愛枝、地曵豪、片山瞳、安部智凛、大西信満、岩間天嗣などなど若松監督映画の常連役者が勢揃いという豪華な顔ぶれオォォー!!w(゚ロ゚)w
冒頭で『古事記』のイザナギとイザナミの国作りで、イザナミが火の神カグヅチを生む時に陰部を焼かれて死んだという神話が引用されるけど、その時にシーンに映る女性器をイメージさせる岩石が、007シリーズのアバンタイトルみたいなセックスと死のイメージが語られる。
そこから寺島しのぶ扮する産婆の所に産気づいたという知らせが入って、そこから子供を取り上げて・・・
中上健次の小説では部落のことを「路地」と言うらしいけど、原作同様この場所を「路地」と言ってて、おばあはここの路地の各家で生まれた子供を何年にも渡って取り上げてきたことが語られる。
おばあは実は今わの際にいて、佐野史郎扮する先立たれた旦那の坊さんとあの世とこの世で会話してるという幻覚と言うか夢と言うか、そこで話す回顧録みたいな感じで話が進む。
真っ先に井浦新扮する彦之介が女に刺されて瀕死の重体の状態で隠れてて、中本の男は代々女が元で短命に終わってることが観客に示されて、丁度彦之介が死ぬ頃に息子の半蔵が生まれておばあが取り上げるという何とも対照的な流れ。
前作の『11.25自決の日』の三島由紀夫役でもそうだけど、井浦新の演技力は相当なもんですよこれ(・∀・)イイ!!
半蔵はいっぱしの男に成長して、親父同様女をとっかえひっかえして、結婚してからも後家の女とねんごろになったりよその女に走ったり・・・駄目ですね~~~~~(;´∀`)
生まれてきた子供を見て、自分の手で抱っこしないで嫌そうな顔をして逃げ出すが、男にしてみればある意味正体不明の訳が分からない生き物が自分の奥さんの腹から出てくること自体に気持ち悪さを感じるのも分からなくはないです(*´・д・)*´。_。)ゥミュ
残酷な話だけど、妊娠した途端、あるいは子供を産んだ途端に男は女に女っぽさを感じなくなるという話は良く聞くし、妊娠自体がある意味「気持ち悪い」もんだという意識も人間の深層心理の中であるのかも知れませんな~(;・∀・)
半蔵に入れ込む後家の女を演じてる安部智凛のけだるそうな雰囲気とエロさは半端じゃねえ!!!Σ(゚Д゚ノ)ノオオォッ
一度は後家の家に行くのをやめて仕事に専念するも、奥さんの息子のために仕事に精を出すと決めた半蔵だが、同僚が誤って怪我をして金をその後家の家に無心しに行ったが・・・
そこにいた別の男と一緒に3Pに走って元の木阿弥Σ(゚Д゚ υ)
そこからまた悪い虫が騒ぎ始め、結局親父同様刺されて( ´゚д゚`)アチャー
結局血は争えないということか(*゚Д゚)
その現場を見てた三好も中本の血を引く男で、半蔵の祖父が産ませた子供の1人だとか。
ヒロポンを打って盗みを繰り返すなどして、常に刺激を求める刹那的な生き方をしてる。
悪い仲間とつるんででかい盗みを働くも、その仲間が金を持ち逃げしたようで、ヒロポンの副作用で目が見えなくなっていく中、盗みやヒロポンに飽きて飯場に行こうとするが途中女を見つけてその女とねんごろになるも、亭主にばれて殺されそうになったところ逆に刺し殺してしまうΣ(゚Д゚ υ) イタ!!
仕方なくおばあを頼って1日だけかくまってもらい、その後飯場に行って仕事をするも、完全に目が見えなくなってそのうち首を吊っってしまう。
ここでかくまってもらって、さらに家主が隣に寝てるってのに平気でことに及ぶという駄目っぷりはもう(;´Д`)
生き急いでたと言うか、常に刺激を求めて生きてきた末の末路と言うことですな(;´∀`)
そしてそれをおばあに知らせに来た、染谷将太扮する達男もまた中本の血を引く男。
この男も何かあったのかと思いきや・・・
今わの際にも関わらず、あの世からの突っ込みがΣ(゚Д゚ノ)ノオオォッ
「お前と達男との間に何があった?」
「(;゚д゚)ェ. . . . . . .」
「わしは何でも知ってんだぞヾ(゚Д゚ )ォィォィ」
「達男との間には・・・」
今まで半蔵と三好に散々夫婦生活はどうなんだとか、女にこんなことされたとか言われてからかわれてても動じなかったおばあだが・・・
おばあも女だったんですな~(゚∀゚)アヒャ
この大落ちで、何でこの役を寺島しのぶがやってるのか分かったo(`・д・´)o ウン!!
この台無し感と脱力感は相当なもんですよ(;^ω^)
今まで何人もの子供を取り上げてきて、自分が取り上げてきた子供の生死を仏に無事を祈りながら見守ってきたが、中本の男は結局刹那的な生き方しかできず非業の死を遂げる。
終いには自分もその片棒を担ぐ結果になっちまい、達男もその後長生きできず短命で死んでしまったと語られる。
台無しではあるけども中本の男は多くの女に愉楽を与え続けてきたということと、これからも中本の男は愉楽を与え続けるということを暗示しながら終わるのはイイネ♪d('∀'o)
これが若松監督の遺作と言うのも、キャストの顔ぶれと言い映画の落ちと言い、どこか死期を悟ってたのかとも思えるような感じもしなくもない。
森田芳光の『僕達急行 A列車で行こう』もそうだけど、映画監督の遺作って今観るとどこかそんな感じの映画になってるのが多い気がする。
そして濡れ場シーンは、さすがピンク映画出身だけあって秀逸ですな(゚д゚)イーヨイイヨー
若松孝二の世界観、人間観、死生観の集大成的な作品は絶対今劇場で見ないとo( ゚Д゚)oブンブン