「142人による大きくてハッピーな輪」人生、ブラボー! マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
142人による大きくてハッピーな輪
昨今、遺伝子上の親が別にいることを知って精神的苦痛を覚えたり父親を捜す子どもたちが増え、そうした子らには精子ドナーを使った不妊治療は中止すべきという考えが多いと聞く。
ところがこの作品での子どもたちは、本当の父親が誰なのか知りたいだけで、不妊治療のあり方については言及していない。
ここでドナーの身元開示を求めた142人の子どもたちは、皆、父親が同じで、いわば全員が兄弟・姉妹というところがミソだ。
血の通った142人もの兄弟が集い、相談し合い助け合い、パーティーで盛り上がる。決して孤独ではなく、大きな輪を作り上げたところがハッピーなのだ。
その父親であるダヴィッドは、693回もの精子提供を世間から蔑まれツマ弾きされるのがコワくてなかなか名乗り出られない。
けれども弁護士から渡された子どもたちのプロフィールから所在をつかみ、つい生活や仕事に干渉してしまう降って湧いたような親心に和(なご)む可笑しさがある。
身ごもった彼女からは父親失格のレッテルを貼られ、本人も父親になれるはずがないと思っていた42歳のダヴィッドだが、子どもの存在を実感していくうち人生への考え方が変わる。それがそのまま観ているこちらにも伝わってきて、生命の奇跡や人生の巡り合わせを考えさせられる。
昨日まで他人だと思っていた人々が兄弟だったとしたら・・・、家族の単位とはいったいなんだろうと思わせる作品だ。
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