劇場公開日 2013年9月21日

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「SMとは、生け贄の血ではなく、恥を嗜む文化である」甘い鞭 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0SMとは、生け贄の血ではなく、恥を嗜む文化である

2016年10月17日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

セノバでは『R100』に引き続き女王様達の御乱交を眺めるとは予想だにしない秋の宵

笑いで攻める前者とは違い、鞭を振り抜くド直球のSM映画やと聞きつけ、馳せ参じた次第だが、う~む…

嫌悪感がエクスタシーを凌ぐ世界観に戸惑うばかりだった

私は自他共に認めるヘンタイだが、SMって趣味やないんかな?と痛感

緊縛、吊し、蝋燭まではエロスの許容範囲やけど、メインの鞭打ちの刑は痛々し過ぎて、さすがに引いてしまう

浣腸が無かった分、まだマシやったかな

まあ、今作を取り上げる時点で、読者は既にドン引きやと察するが、観に行ってもうたんやから仕方ない

普段は不妊治療の第一人者として活躍する美人女医だが、夜は一転、高級SMクラブのM嬢に変身

2つの顔を使い分け、サディストの客どもの容赦ない私刑に悶える奴隷の快感を一糸まとわぬ姿で表現したのは、かつて史上最強の熟女と謳われた壇蜜

『花と蛇』の杉本彩の如く、ピークを越えた肉体派女優を官能ドラマの巨匠・石井隆がどう脱がせては追い込み、痛めつけ、更なる美しさを開眼させていくのか!?

生唾を呑み注目したものの、中途半端な開花という印象を受けた

石井作品の常連でもあり、SMクラブのVIPでもある伊藤洋三郎&竹中直人の常軌を逸する仕置に、歪めながらも昇天する彼女のスレンダーで艶めかしい身体と表情の豊かさは評価すべき筈である

しかし、総合的満足度から見渡すと霞んでしまう

勃起には到らない

その最大なる要因は、主人公を苦しめるトラウマ化した過去のエピソードが遥かに強烈だからである

女子高生時代に隣人に拉致監禁され、レイプと拷問の嵐の果て、犯人を殺害し脱出する血塗れの惨状は、もはやエロスの域を逸脱している

衝撃的な場面を純真無垢なイメージの強いアイドル間宮夕貴が演じていたのが更にショック度を強めた

現在と過去の屈辱が交錯し、過激さを極めていくと、吹きすさぶ血飛沫の豪雨が銀幕を貫き鼻腔を襲う

血肉の刺激臭に顔をしかめたくなる地獄絵図に興奮する輩は、余程の芸術家かインポのどちらかだ

私は『けっこう仮面』で充分やと自覚し最後に短歌を一首

『拒めども 吊す唇 恥(血)を唄う 振り抜く雨に 舌は溺れて』by全竜

全竜(3代目)