「初見に分かりにくいがよく出来ている映画」劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語 しげるさんの映画レビュー(感想・評価)
初見に分かりにくいがよく出来ている映画
合計4回見たあとのレビューです。
お話はすこし展開が2転3転あり、キャラが意味深につぶやくシーンも多々あり、回想も一瞬のカットを含めると多いです。
かの漫画家吾妻ひでお氏も「よくわかんなかった」とツイートしています(笑)私も初見ではお話がいまひとつわからない部分があり、腑に落ちないけどほむらやったね!って気分になれはしましたっていう程度の満足度。
ただし、さすがの演出力。新房さんのファンではなくむしろ幾原ファンだった私でも映像に関しては90点以上の評価が付けられると思います。事実、かわいいから、動きが気持ちいいからもう一度映像を体験したいと思って2度3度4度と劇場へ足を運んだ次第です。
映像に関して一つ言及すると、日常パートの「浮遊感」が焦点になっているのではないかと考察します。というのは、ほむらの空想ですから、それを表現しようとして走り方もガッツリしたダッシュではなくいかにも女の子らしい(といったらジェンダーにひっかかりそう…)振る舞いをしますし、パステルカラーから真実へ近づいていくごとに背景の色彩は濃く暗くなっていきます。このあたりはよく出来ていると感心します。
それから、ほむらの空想の世界でのさやかとべべの演出もちょっとした工夫があり、観賞者にヒントをくれています。
それは、おそらく絵コンテの段階で決着が付いています。緑髪の少女のナイトメア退治をしたあと5人が丘の上で日の出を眺めるシーンで起こりました。5人の魔法少女が画面に対し左よりに位置し、右斜め上に視線を向けているカットが5人分1人ずつありますが、さやかだけが体を
左に向いています(他の4人は体は右向き視線も右)。
これは舞台演出のテクニック的にさやかは優位な立場にあることの暗示だと思われます。そして見事にそのとおりになっていますお見事。
べべの演出に関してはまず新キャラであるから重要なのは当然というのはおいといて、ほむらに首根っこ掴まれて「ワカラヌ」などと言ってる字幕が出ているシーンで起こります(ヒントがあります)。音です。べべが「キューベー」に近い音を発しています。しかし、字幕はこの音に対して出てきません。「ほむら気づけよ!」と言いたくなるシーンでした。
そんなこんなで、ちょっとした工夫もこらしてあって丁寧に作られていて、全体的な話の流れも無理がない程度に自然で(悪魔爆誕のとこはフックが効いていますが)いい脚本でいい映像をよく作ったなと思います。初心者向けでないことがネックとなり星はマイナスつけてますごめんなさい。