「サイコパスをどう描くのか?」セブン・サイコパス Teiranさんの映画レビュー(感想・評価)
サイコパスをどう描くのか?
観始めた時は、血生臭い場面が度々出てくる私の苦手なタイプの
作品だったので、失敗したかな~・・・他の映画観ようかな~・・・と
思いつつ、「サイコパスをどう描くのか?」という興味に惹かれて
最後まで観てしまいました
結論から言うと、結構面白かったです
残酷な場面が多いので、なるべく直視しないように
目を時々逸らせながら観ていたので、人によってはそういう時点で
アウトかなぁとは思った
話はよく出来ていたと思う
最初の方は、様々なサイコパス映画のオムニバスかと思うような短い
シーンの寄せ集め、そこに脚本家の主人公マーティの話を絡ませていき
親友ビリーにサイコパス映画の脚本のアイデア提供してもらう事に
なったあたりから徐々に話が繋がっていき、虚構の入れ子構造の映画の
話の部分がありつつも終盤では、様々な伏線回収して、
話としては納得のいくラストへ(一旦エンドロール始まっても話の
続きがあるので離席しないでください)
一番の注目点は、先にも書いたように「サイコパスをどう描くのか」
だったのですが、一言で言うと「奇人変人異常者倫理観無しで
それぞれ奇妙な拘りを持つ人々」、という感じでした
昔サイコパスという存在に興味を持って調べた事があります
連続殺人犯とか詐欺師に多いとか
彼らは、良心を感じることが出来る遺伝子が生まれつき
欠落しているのだとか
成長するにしたがって、良心を「学ぶ」事は出来るけれど
本当の意味で理解することはできない
だから他人を騙し陥れる事もいたぶる事も平気
一見とても「いい人」のように振舞う事もできる
この映画のような、わかりやすいサイコパスは判別しやすいですが
いい人っぽいサイコパスは、社会にうまく溶け込んでいるように
見えるのでわかりにくいようです
彼らは自分が良心を感じることが出来ない事で悩んだり苦しんだり
する事はない・・・葛藤の基盤となる良心を持っていないから
良心の呵責といったものとは無縁
嘘をつくのが得意なので、作家や俳優の中にも結構いそうですよね
時々作品読んでいて、この人もしかして・・・と思う事があります
どちらかというと、そういうタイプのサイコパス描写を
期待していて解説読まずに観ました
この映画は期待を随分裏切ってくれた上に
猟奇的な描写が多くて、かなり苦手な類の作品なのに
面白く観られたのは、脚本と俳優の演技が良かったからだと思う
ラスト、どうこの話を終わらせるんだろう?と興味津々で
観ていたら、二転三転する展開で意表を突かれました
それがただ、観客の読みを外す事だけを考えたものではなく
それぞれのサイコパスの思考・行動様式にのっとった言動
だったので、なるほどなぁ~・・・と納得
主人公の親友ビリーもサイコパスだったのですが
ホモでマーティの事が好きだったんだな~・・・
全然イチャイチャしてないし直接それっぽい描写も無かったけれど、
セリフの端々や、ラストの意外とも思える結果でそれが判明
ビリー役のサム・ロックウェルの演技が上手い
イカレぽんちだけど本当にこういう人いそう
この辺りはイギリス映画らしいな、と思いました
B級ノリかと思ったら、意外とよく出来た映画で楽しめました
サイコパスに関心がない人には微妙かもしれない
人を選ぶ映画ですけど、観て損はないと思います