「コメディ映画です」ガッチャマン くんぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディ映画です
早大な音楽と共に
「GATCHAMAN」の文字
別にX-MENみたいにならないから!!
予告の時点で感じた寒気。それは本編終了後は極寒の地で1人裸でいる気分に変わった。(原作アニメはほとんど未視聴)
アメコミヒーローやVFX大作に憧れた、中学生の妄想のような本作。見せ場や動きに工夫がないアクションと、PS3スペックのゲーム映像のようなVFXで、これが白組が作る日本最高峰のものかと気が重くなる冒頭シーンですでに肩がガクンと下がった。「アベンジャーズ」のパクリアングルでも「バトルシップ」のパクリ造形でも構わないが、あんな意味のないぞんざいな扱いはさすがに如何なものかと思う。全体に言えることだが、金の掛け方が完全におかしい。VFXをふんだんに使ったところでスケール感やハリウッド感が出ると思っているのか。酷い誤解だ。あの手の映画はVFXはあくまで実写の補助。建物をCGで作ってもちゃんと中の構造やセットは細かく作り込むのが当たり前だ。じゃないと奥行きや実在感が出ないからだ。建物だけ無駄にでかく、中の様子は数個の変んな空間だけが映る。どういう神経してるんだと思ってしまう。予算の問題もどうにか工夫して撮れるはずなのに。この作品が最悪なのはVFXの質でも予算でもない。脚本と監督など作り手の力量ただそれだけだ。
ぱっとしないアクションと並べて酷いのが、ドラマ部分だ。サスペンス演出でパーティ会場って…「ミッションインポッシブル」みたいになるか!!!あんな外連味で撮ったらシーンが浮いてしまうのは明らか。パソコンカタカタ適当に叩いてるだけでハッキングって何だろうか。ハッキングによる指紋認証のすり替えも、今一体何に苦戦しているのかが全くわからず正直笑ってしまった。
時間感覚もおかしいところがいっぱいだ。一刻を争うときにくだらない会話し過ぎて冷めるばかりだ。
ドラマ部分は何がしたいのかさっぱりわからない。戦いの日々に悩んでいるようだが、お前らこの間で始めて戦ったんじゃないの?という疑問が浮き出てくる。悩みと戦う意味、という最近のヒーローもののトレンドを取り入れようとしたかったみたいだが、表面的すぎてなにも葛藤が伝わらない。しかもお前らが悩んでるそれは、ヒーロー論としても若干的外れじゃないのかな?と思うくらいの内輪揉め。ただでさえしつこい悩み描写もこれでは意味がない。
堅物リーダーが仲間に心を開くお話としても、ティーンエイジャーの悩み葛藤の群像劇としても、トラウマ克服ものとしても、さらにはヒーローものとしてもガッチャマンとしても、おざなりで中途半端な結果になっている。
これは本編とは直接は関係ないことだが、たまにレビューで、子供向けの特撮映画みたい、とかを目にするのだが、そんなことはない。特撮映画をあまり見ていないのではないかなと邪推してしまう。本作は、作り手の志の低さから、ドラマとしても、新たなヒーロー論の構築としても、近年の特撮ドラマのレベルには到底及ばぬ出来だと断言出来る。
なぜヒーローものを描くのか、なぜガッチャマンを実写でやるのか、その映画製作で最も大切なことを、作り手自身が、悩みや考えを張り巡らせる過程を踏まずに作っている。だからこのような結果に陥るのだと思う。
作り手が似せたいアメコミ。アメコミの魅力すら彼らは理解していないのか、と思ってしまう。見どころがひとつもない最低の映画である。