「スプリングブレイカーズに撃たれたい」スプリング・ブレイカーズ 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
スプリングブレイカーズに撃たれたい
冒頭でビキニやおっぱいが乱舞してかっこいい音楽が掛かっているだけで「この映画見に来てよかったな~」とたまらない気分になった。
ちょいちょいストーリーの先を見せるカットが挿入される変な構成だった。
黒髪のフェイスちゃんが主人公かと思ったら途中でいなくなってしまい、他の3人は特に掘り下げられることなく描かれていた。もっとも人間性が深く描かれていたのは、保釈金を出したヤクの売人みたいな男で、とても変だった。
浮かれた生活は破綻するに決まっていて、後半は暗い話になっていくのだが、4人とも死なずに終わってよかった。もうちょっとお金に苦労したり、嫌々セックスする場面なんかも見たかった。
若くて羽目を外してしまうととんでもない目に会う。いろいろ思い返して、恥ずかしくなると同時に大事に至らなくてよかったと胸をなでおろした。死ぬならスプリングブレイカーズに撃たれたい。
(追記)
どうしても気になって2回目見た。1回目より登場人物を把握できたのだが、それでも金髪の女の子がどっちがどっちか分からなかった。
一生水着で暮らしていけたらそれでいいみたいな気分はあると思う。しかし、それはその場にいない人間の感覚であって、実際沖縄やハワイで暮らしたらそれが普通になってしまうので、そんなうっとりした気持ちでいられるかどうか分からない。
フロリダの銀歯のチンピラは大金持ちで銃やヌンチャク、手裏剣の自慢をことさらにするのだが、悪い事して得たお金を仲間に分けなかったこともあっただろう、心の通い合うような友達なんか一人もいなそうで、自覚があるかないか分からないけど自慢し続けなければいけないくらい確実に孤独だった。楽園の孤独なんてむしろつらいのかもしれない。シベリアで孤独な方がましだ……なんてことはないかもしれない。
陽気に浮かれて生きられたらさぞ楽しい人生だろうと思う。楽園を舞台に冷たく不幸せなドラマが描かれていた。それでもなおかつ、おっぱいやお尻やビキニや銃やお金は最高だし、心なんかどこにもいらないと、ついうっかり思ってしまうのだった。女の子たちはたびたびお婆ちゃんやお母さんに電話していた。彼女らがハイヒールではなく運動靴をずっとはいていたところが何かを物語っていた。