「自分と向きあわされる映画。」聖者たちの食卓 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
自分と向きあわされる映画。
作る、食べる、片付ける。その様がたんたんと描かれている。
最初と最後に簡単なテロップが流れる、途中寺院に掲げられている教義のような言葉が映され、字幕がつくだけ。
特に、BGMをつけるわけではなく、その場の音を拾う。言葉がわかれば何が語られているかわかるのかもしれないと思いつつも、”生活音”として拾っているだけなので、彼らの出す音がBGM。そんな音すら、音楽に聞こえてくる。
黄金と白亜、そして揺蕩う水。
それだけでも美しいのに、人々の色の洪水。女性のサリーやパンジャビスーツのあでやかさ、しなやかさ。綿・絹・麻?そこに施された刺繍の見事さ。ため息が出る。
そして人々の顔。ひたすら自分の仕事をこなす人々。談笑する人々。休んでいる人々。ふと、自分が映されていることに気がついて、それぞれの反応をする。若者が自分を映せとばかりに寄って来るのは世界共通か(笑)。
『ベルリン・天使の詩』の天使にでもなったような気分だ。
インドはカーストがあると聞いたのに、老若男女だけでなく、富める者も貧しそうな者も、皆同じように働き、同じように食べる。なんなんだ。
無料食堂というと、日本の派遣村のように、お金がない人々にお金がある人々が恵んであげるスタイルかと思っていた。なんなんだ。
『聖者たちの食卓』とあるから、信者が神様へのお供え物を作る様の映画と思っていた。なんなんだ。
そんな私の思い込みを撃ち砕いていく。
そんな風に、映像を見ながら、自分との対話が続いていく。
自分だったら?とか、今の自分の生き方と比べたり。
作る、食べる、片付ける、沐浴する。
ただそれだけなのに、なぜか断捨離して、心が満ち足りていく。
(イベントでの上映会で鑑賞)