「本質的な個性の尊重を製作側が理解していないと感じた。」ピッチ・パーフェクト movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
本質的な個性の尊重を製作側が理解していないと感じた。
gleeを散々見ているので、なんとなく既視感が漂う。
先輩のオーブリーは父親の結果至上主義により結果にこだわるから選曲も振り付けも冒険ができず、雁字搦めになっていて、自分が出そうになると、吐いてしまう。
同じく先輩のクロエはオーブリーとバランスを取り、後輩達をよく気遣う。一年上の先輩からは口が卵臭いだの言われていたし、最後も赤毛いじりに使われていて、良い人なのに損なキャラ。高い声がメインだったが声帯結節の絶望を味わい、手術を乗り越えたら低音が出るようになった。
2人が募集したアカペラサークル、ベラーズの新入生として、DJになりたいベッカと声量があるエイミー、ボイパができるハナメイリー(本当に菊地凛子でないの?)、ビッチな感じの子、黒人レズの子、など色々集まる。
全国大会優勝を目指すには、同じ大学の男子アカペラグループ、トレブルメーカーズを倒さねばならず、ベラーズは意識しまくり。
だけど全国目指すには、同じ大学内で争ってるより2グループ合わせた方が良いんでないか?と思うがそこは映画。両グループで1位か2位になるのが見えた流れ。
正直脚本は、そんなに驚かない。
個人個人色々抱えて思ってるけど、最後に殻を破るのもいつも通り。
最終だけでなく、もっとベッカのDJ能力が遺憾なく発揮された曲構成で、そこにパンチのある歌声が複数絡んでくる感じが良かった。
というかgleeが編曲含めどれだけ上手いか再確認してしまう。
トレブルメーカーズは確かに上手いがトップがめちゃくちゃ意地悪で、その意地悪が個人オファーに乗って最終では消えてくれる、ベラーズ都合に合わせた展開。
ベッカを好きなジェシーが率いる最終はとても良く、ベラーズ全体をジェシー1人が食ってしまっていた。
そして、多人種を入れれば良いかのようなメンバー構成で、アジア系は変人や冷たい、アメリカの象徴的体型の女の子はセックス依存、黒人のレズの子はギャンブル依存、肥満の子、ユダヤ系いじめの肥満の子、赤毛、など、わざわざキャラ付けしてくる。
せっかく曲で盛り上がった後のラストに、赤毛いじりを入れてくる最低センス。
この国はごく普通にそれぞれの違いを当たり前に受け入れることができないのかね?
gleeでさえリーダー格リアによる人種いじめやドラッグ死。。伝えたいことと内情が真逆。
個性が混じるって、ただ色んなキャラが集まって、存在を認められているだけではなくて、尊重や理解が深く醸成されての物だけど、椅子を突き合わせて自己紹介したシーンのみ。
そこでもはっきりとお互いをよく知らないとベッカが言っている。ここの追求こそがアカペラの団結に繋がってくるのに、歌詞が少し寄っている選曲だけという感じでもったいない。個性を活かす展開にはjust the way you areを流しておけば万能だと思ってる?薄っぺらいと感じてしまった。
歌も振り付けも、キャストはみな努力して臨んだはずなのに、台本と演出で台無し。
でも、どうすれば勝てるか正解がない目標に向かって、保守に走ってしまったり、確実線を取りたくなったり、自分が本当はどうしたいかを無視してしまうオーブリーの葛藤やストレスはよくわかった。
他者と高みを目指す、勉強以外の全てで、その葛藤は人生ずっと付きまとう。
正しいかもしれないが大学最後の年に下級生の暴走で切符が消えたら、怒るわそりゃ。
大会前にまとめきれていないのが問題なのだが、そういう意味でも台本がイマイチだった。