はじまりのみちのレビュー・感想・評価
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いい映画です。だけど…
木下監督の母が自分のおにぎりを便利屋と木下監督に分け与え、それを木下監督がしっかり食べる場面とか、母と息子ってこうなんだなぁと泣かせる。映画、「陸軍」の場面の母は、よく言われる、女々しくはなかった。むしろ母も戦っている印象がある。出征する子供の武運長久を祈る気持ちもあるだろうし、無事で居て欲しい気もあるだろう。しかし、それを越えての母の愛は力強く凛々しい。私はむしろ血湧き肉躍りぞくぞくした。この陸軍がこの映画の主題だとしたら、私達にぞくぞくする感動を与えて欲しかった。映画を作る上でいろいろ制約もあっただろうが、それは演出とか音楽でもう少し何とかなったのでは無いか?それよりもこの監督は主題に母の愛の力強さという物が考えつかなかったのではないか?また、エンディングの映画紹介場面では、野菊の墓の映画では主人公とたみさんの分かれのシーンがチョイスされていたが、ここは、たみさんが泣く泣く好きでも無い人と結婚するときに、キッと覚悟を決めて上を向くシーンがあるのだが、その女性の凛々しさこそがこの映画の一番素晴らしいところだった。その場面こそチョイスして欲しかった。この映画は女性の凛々しさ、母の強さを考えに入れてなかったため、薄い印象の映画になってしまった。こんなこと言っては失礼は重々承知しているが、山田洋次監督だったらもっと、人間くさく、恥ずかしく、醜く、笑わせて泣かせてくれただろうなぁと思う。いい映画には違いないので見て良かった。
映画演出として完璧に近い。
10年に一度の作品に出逢うことがある。非の打ち所がない。映写終了後に立ち上がることができなかった。1週間たった今も、感情がフラッシュバックしてくる。着想、プロット、シナリオ、カメラワーク、芝居、音楽、全て一体となって完成している。一瞬も無駄がない。これがアニメという100%虚構の中で人を感動させてきた監督ならではの力量なのか、実写初監督作品だなんて奇跡のようだ。昨今の「映画」監督たちの顔色なからしめる作品。
愛情、悩み、戸惑い、励まし、決断、反戦、平和、希望・・・つまりは「生きていくことの切なさ」のを全てをしずかに込めてそっとさしだす。アクションや爆発などの「劇的な」事件など、そうそう私たちの周りのに起きるわけじゃない。淡々とした日常の中に人生の真実を描くことこそ真の演出力であり、映画が芸術であることを世に認めさせる立脚点だ。この演出技法は今後長く語り継がれるだろう。どんなに賛辞を送っても惜しくない。
木下作品の引用部も抑制が効いて「お見事!」に尽きる。ラストのたった一言の引用ですべてのパズルのピースがピタリとはまって見事に全体像が完結する。何という構成力。その天才に嫉妬してしまう。
ただし観客に人生経験が必要な作品であり、誰が見ても「泣ける」映画ではないとも思う。説明的な部分は極少なく、行間を読む力量がなければ「?」となりかねない。若い映画ファンには、是非「木下恵介」とその周辺の映画の歴史について知ってから、足を運んでほしい。そうすれば人生にとっての珠玉の一本となるだろう。全ての人の人生にそれぞれの「はじまりのみち」があることに気づくだろう。
原恵一監督、ありがとう。何十年も映画ファンをやってきて幸せです
名作のようで名作でない
なんとも?!
見事です。
これだから、「アニメ屋」は…
6月某日、錦糸町楽天地で鑑賞。
劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズでアニメ界というより、日本映画界に金字塔を打ち立てた原監督の、初の実写映画。
筆者は、原監督のクレしんは大好きだったし、すばらしい作品を残した、と思っている。その監督の初の実写だから、それなりに期待したが…。
木下作品への尊敬、敬愛の念は筆者も十分に持った映画ファンではある。
本作も、原監督の木下恵介への尊敬と、作品への愛情にあふれていて好感が持てる。
主演の加瀬、母親役の田中もいい味を出している。予想以上によかったのが兄役のユースケ。
浜田岳もこれくらいはできて当然だが、いい役をもらった、と思った。最後までいい気持ちで見られた作品である。
だが、しかし!
本作は味わい深い、いい映画だ、と評価したいし、木下作品などほとんど見たことのない若い映画ファンに関心を持ってもらうためにも、「見てもらいたい」映画だ、と薦めたい。
しかし、あのクレしんで発揮した、原監督の才気煥発の演出力というか、表現力が影を潜めているのはどうしたことか。
もちろん、テーマがテーマなんだから、クレしんのような作品に仕立てられるわけはないのわかる。
それでも、作品のかなりの部分を木下監督のオリジナル作の名シーンをちりばめるのに終わっているのはどうしたことか。
こんなのなら、NHKスペシャルあたりでやってくれればいい話だ。
これを劇場作品として捕らえるなら、やはり点数は激辛にしておく。
監督は撮りたい作品を撮ればいい、というものではない。
千数百円払ったことに満足できる作品を撮らなければいけないのだ。
たまたま、訪れた楽天地。原ちゃんの舞台あいさつもあった。
悪いけど、そのしゃべりにも魅力はなかった。
「パンフレットご購入で監督のサインが…」と劇場スタッフは声をかけていたが、僕はその足で、同じビルで上映している「クロユリ団地」を見に急いだのだった。
よかった!
木下監督に捧げるオマージュ
可もなく不可も無くサラっと路線の出来上がり。
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