はじまりのみちのレビュー・感想・評価
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戦争中の出来事を学ぶ
昔は戦争のために制限されていたものが多く、今の時代のように、言論の自由・表現の自由なんて、声をあげることができない、生きにくさを感じました。
内容に共感はもてましたが、観るのに正直つかれたのでこの評価にしました。
緑の中、歩みに寄り添って
木下惠介監督生誕100周年記念作品。観て良かった、と思いました。
太平洋戦争末期、失意を抱いた若き日の木下監督は、体調の悪い母を疎開させるため、リヤカーをひいて峠越えします。
リヤカーをひく息子たちも大変でしょうが、ひかれる母もどれほど大変でしょう。緑の中を黙々と進める歩みに心が寄り添っていきました。
初対面で同行する、便利屋さんとの距離感がいいです。父と息子の会話にもジンときました。
ただ、あの雨傘はちょっと木下家にはそぐわない気がしました。
木下惠介監督作品から多くの映像が紹介されているのも、上手く物語とシンクロしているのと、「とにかく本物を一緒に観ようよ。初めての人も観てみてよ。」という気持ちがあふれているようで良かったです。
木下監督作で「喜びも悲しみも幾年月」は、我が家が転勤族なこともあって心に留まり続ける作品です。「楢山節考」の映像には驚きました。
いい映画です。だけど…
木下監督の母が自分のおにぎりを便利屋と木下監督に分け与え、それを木下監督がしっかり食べる場面とか、母と息子ってこうなんだなぁと泣かせる。映画、「陸軍」の場面の母は、よく言われる、女々しくはなかった。むしろ母も戦っている印象がある。出征する子供の武運長久を祈る気持ちもあるだろうし、無事で居て欲しい気もあるだろう。しかし、それを越えての母の愛は力強く凛々しい。私はむしろ血湧き肉躍りぞくぞくした。この陸軍がこの映画の主題だとしたら、私達にぞくぞくする感動を与えて欲しかった。映画を作る上でいろいろ制約もあっただろうが、それは演出とか音楽でもう少し何とかなったのでは無いか?それよりもこの監督は主題に母の愛の力強さという物が考えつかなかったのではないか?また、エンディングの映画紹介場面では、野菊の墓の映画では主人公とたみさんの分かれのシーンがチョイスされていたが、ここは、たみさんが泣く泣く好きでも無い人と結婚するときに、キッと覚悟を決めて上を向くシーンがあるのだが、その女性の凛々しさこそがこの映画の一番素晴らしいところだった。その場面こそチョイスして欲しかった。この映画は女性の凛々しさ、母の強さを考えに入れてなかったため、薄い印象の映画になってしまった。こんなこと言っては失礼は重々承知しているが、山田洋次監督だったらもっと、人間くさく、恥ずかしく、醜く、笑わせて泣かせてくれただろうなぁと思う。いい映画には違いないので見て良かった。
母を大切にしたい
ちょうど昨日まで、母をお伊勢参りと岐阜の用事で、新潟から車で連れて行っていたため、ちょっと気持ちが分かる内容だった。リヤカーで峠を越えるような苦労はなかったのだが、それでも面倒でつらかった。この映画を見た後だったらもっと優しくできただろうにと後悔した。
濱田岳さんが素晴らしい勝手な人間ながらも、その正直さで核心を突くような素晴らしい役どころで、演技も素晴らしかった。田中裕子さんが上品なおばあさんになっていて見事な存在感だった。
しかし、映画としてはあまりに地味で、物足りなさを感じた。予算もあるのだろうか、流れる木下監督作品に比べて映画のスケールが小さくて寂しかった。
映画演出として完璧に近い。
10年に一度の作品に出逢うことがある。非の打ち所がない。映写終了後に立ち上がることができなかった。1週間たった今も、感情がフラッシュバックしてくる。着想、プロット、シナリオ、カメラワーク、芝居、音楽、全て一体となって完成している。一瞬も無駄がない。これがアニメという100%虚構の中で人を感動させてきた監督ならではの力量なのか、実写初監督作品だなんて奇跡のようだ。昨今の「映画」監督たちの顔色なからしめる作品。
愛情、悩み、戸惑い、励まし、決断、反戦、平和、希望・・・つまりは「生きていくことの切なさ」のを全てをしずかに込めてそっとさしだす。アクションや爆発などの「劇的な」事件など、そうそう私たちの周りのに起きるわけじゃない。淡々とした日常の中に人生の真実を描くことこそ真の演出力であり、映画が芸術であることを世に認めさせる立脚点だ。この演出技法は今後長く語り継がれるだろう。どんなに賛辞を送っても惜しくない。
木下作品の引用部も抑制が効いて「お見事!」に尽きる。ラストのたった一言の引用ですべてのパズルのピースがピタリとはまって見事に全体像が完結する。何という構成力。その天才に嫉妬してしまう。
ただし観客に人生経験が必要な作品であり、誰が見ても「泣ける」映画ではないとも思う。説明的な部分は極少なく、行間を読む力量がなければ「?」となりかねない。若い映画ファンには、是非「木下恵介」とその周辺の映画の歴史について知ってから、足を運んでほしい。そうすれば人生にとっての珠玉の一本となるだろう。全ての人の人生にそれぞれの「はじまりのみち」があることに気づくだろう。
原恵一監督、ありがとう。何十年も映画ファンをやってきて幸せです
名作のようで名作でない
途中はともかく、最後にまとめて作品紹介を入れてしまったのはどうなんだろう。
あぁ、そういや『喜びも悲しみも幾歳月』を見たことがあるが、木下恵介だったのか、とか
自分が見た『楢山節考』は今村昌平版だったんだなぁ、とか。
何を見たのかわからなくなって、映画本体の印象がかなり薄れてしまったような。
結局、自分がやりたいことができないヨヨヨ、と泣いてただけの話じゃねぇのか、という印象しか残らないんじゃ?
名作のようで名作でない。
でも自然はきれいだ。戦っているのは人間だけだ。
加瀬亮のはなみずと、田中裕子のよだれに +0.5。
なんとも?!
なにこれって感じで特に感動もなく。
見にきてる観客は、婆さんばかり。
しかも、ペチャクチャうるさいし。
こら!そこのおばはん! あぁ しんどかったなぁ とか ようしてもろた。 とか いちいちうるさいんじゃ。
見事です。
随所に木下監督の作品がインサートされますが、
とても自然で見事でした。
原恵一監督は木下監督を好きで好きでたまらないのだと思う。
実にまっすぐな、あえて個性を抑えたかのような演出に拍手。
悪い人が一人も出てこない、
戦時中なのに戦闘シーンが出てこない、
劇的な山場もどんでん返しもない映画。
でもね、退屈もしないで心にスーっと入ってくるんです。
子を思う母と母を思う子の物語。
いかにも松竹!な感じではあるけれども、
文句のつけようがない素晴らしい作品でした。
便利屋の濱田君、助演男優賞間違いなしでしょ!
これだから、「アニメ屋」は…
6月某日、錦糸町楽天地で鑑賞。
劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズでアニメ界というより、日本映画界に金字塔を打ち立てた原監督の、初の実写映画。
筆者は、原監督のクレしんは大好きだったし、すばらしい作品を残した、と思っている。その監督の初の実写だから、それなりに期待したが…。
木下作品への尊敬、敬愛の念は筆者も十分に持った映画ファンではある。
本作も、原監督の木下恵介への尊敬と、作品への愛情にあふれていて好感が持てる。
主演の加瀬、母親役の田中もいい味を出している。予想以上によかったのが兄役のユースケ。
浜田岳もこれくらいはできて当然だが、いい役をもらった、と思った。最後までいい気持ちで見られた作品である。
だが、しかし!
本作は味わい深い、いい映画だ、と評価したいし、木下作品などほとんど見たことのない若い映画ファンに関心を持ってもらうためにも、「見てもらいたい」映画だ、と薦めたい。
しかし、あのクレしんで発揮した、原監督の才気煥発の演出力というか、表現力が影を潜めているのはどうしたことか。
もちろん、テーマがテーマなんだから、クレしんのような作品に仕立てられるわけはないのわかる。
それでも、作品のかなりの部分を木下監督のオリジナル作の名シーンをちりばめるのに終わっているのはどうしたことか。
こんなのなら、NHKスペシャルあたりでやってくれればいい話だ。
これを劇場作品として捕らえるなら、やはり点数は激辛にしておく。
監督は撮りたい作品を撮ればいい、というものではない。
千数百円払ったことに満足できる作品を撮らなければいけないのだ。
たまたま、訪れた楽天地。原ちゃんの舞台あいさつもあった。
悪いけど、そのしゃべりにも魅力はなかった。
「パンフレットご購入で監督のサインが…」と劇場スタッフは声をかけていたが、僕はその足で、同じビルで上映している「クロユリ団地」を見に急いだのだった。
親子の情を描くこと。
まさにタイトルに相応しい内容が名監督への敬愛に満ちている。
「親子の情を描くことが何故いけないんです?」と、食ってかかる
加瀬亮演じる木下惠介が、そのまま今作の原恵一の感性と繋がる。
親子愛、とりわけ息子が母親に注ぐ思慕の情と、母親が息子に注ぐ
究極の愛は、自分の母と兄の関係に観てとれるし、私が息子を
想う気持ちにも重なる。嫁と姑の諍いが絶えないのも納得至極だ。
そして時代が映画という媒体を使い、広く訴えたのが戦争である。
日本だけではない、海外のあらゆるフィルムが検閲に晒され、
多くは焼却されたり、フィルムをカットされるという扱いを受けた。
所詮こういった娯楽は、何もかもが時代に左右され翻弄される。
だけど「ここで腐るなよ!木下君!」も本当。(さすが松竹・城戸四郎)
いつか必ず自由に描ける時がくる。その時こそ、自分の映画を。
結果、木下惠介は多くの名作を次々と世に出す監督へと成長する。
特に彼の作品を熱心に観たわけではないが、作中で紹介される
木下作品はほとんど観た(もちろんビデオでになるけど)
カレーライスのエピソードは、あのシーンに繋がったのか(涙)
便利屋と破れ太鼓の阪妻の姿がピタリと重なり、涙がこぼれた。
二十四の瞳も然り、陸軍然り、楢山節考然り、数々の名シーンが、
今作で描かれるエピソードと重なり、エンドでは感動の涙が溢れる。
よく繋げた。よく演出したね。と、原監督に拍手を贈りたい。
さて、本作の内容は
次回作に待ったをかけられ腐った木下青年が、実家浜松に戻り、
脳溢血で倒れた母親を看病しつつ、兄と便利屋の三人リヤカーで
山越えをして、母親を勝坂まで疎開させる、という物語。
戦中から戦後にかけて、木下が家族とともに経験した出来事総てが
彼の原点(戦前もいい作品を撮ってますが)になっていることを示す。
一緒に旅をする便利屋(濱田岳)が、とりわけいい味を醸しており、
言葉少ない兄弟(兄はユースケ)の雑談相手にもなっているのだが、
河原にて、橇の合わない木下に「陸軍っていう映画知ってるかい?」
と感想を訥々と語るシーンが素晴らしい。延々とノーカットで
陸軍のラストが流されるのだが、母親の田中絹代の追いかけ場面が
息子を戦地へ送る母親として女々しすぎるという、曰くつきのシーン。
ここで冒頭の「親子の情を描くことが何故いけないんです?」を思う。
どの母親も旗を振り万歳三唱をしながら、心の中で泣いているのを
木下が彼女の表情動作ひとつで、恐々と訴え続けるのが凄まじい。
口八丁手八丁で俗世に塗れながら生きてきた便利屋のような男が、
ああいう映画をもっかい観たいなぁ。という言葉に無言で男泣きを
する木下は、やっぱり間違ってない、とここで自信を回復したはず。
映画監督の性というか、どんなシーンも映像化して考える
(ファインダーを覗く)仕草が、やはり手放せない才能を感じさせる。
のちに疎開先で母親から手渡される手紙によって、彼は東京へ戻り
監督業を再開するのだが、そこまで息子の決めたことにはただ頷き、
批判も不満も口にせず(病のせいもあるが)、じっと見守る母の姿勢に
またしても私は感銘を受けた。あ~こういう母親になれたら!(涙)
どうして人格者たる人物の親というのは、こうやって物静かなんだ。
あれこれ口出しをせず、ここぞ!というところでだけ、意見を云う。
この一家は総じて寡黙な家系^^;にも思えるが、まぁそうだとしても、
父といい、兄といい、終始穏やかに語りかける姿勢はとても素敵だ。
木下映画の名作は数々あるが、
私的にいちばん深く心に残っているのが「喜びも悲しみも幾歳月」で、
まだ結婚の真髄をなんにも分かっていなかった自分に、
夫婦って、家族って、こんな風に支え合っていくものなんだ!を、
教えてくれた教科書のような存在。
これを観て、何事にも耐えるぞと、深く心に決めたはずなのに…(爆)
自分の母親の実家が今作で描かれた土地に近く、方言が耳慣れて
とても懐かしく感じられた。母親を誘えば良かった、と後で思った。
(カレーライスは当時から御馳走だったのね。どこのカレー粉だろう)
よかった!
題名のとおり、若き日の木下恵介がワンス・アゲインに至る数日間のロード・ムービーでした。
その素朴なロード・ムービーは登場人物も含め無駄なことがなく、木下恵介作品のテーマの源流の一つに辿りつくことができたように思いました。
「病気の母親をリヤカーで運ぶ」だけの映画にここまで心は揺さぶられるとは!
木下監督に捧げるオマージュ
最初はロードムービーかと思いました。疎開するためリヤカーで母を運ぶなんて、本当にあった事なんですね。加瀬君の表情が良くて見に行きました。確かに木下監督ファンにはとても懐かしい作品が再映されているのですから。私は子供の時に、二十四の瞳、喜びも悲しみも行く年月、楢山節考を見ています。監督の作品には家族の愛があふれているものが多いと思います。観客も少ない中、7~80代と思われるお爺さんが終わってから。俺全部見たじゃと涙ぐんでいました。こんな映画もあって良いのでは思いました。
ドキュメンタリーだった
原恵一ということで期待して観に行ったけど、話が単純でオチがいまいちだった。
木下監督の過去の作品が流れる部分で涙した感じ。
木下監督への感情移入で涙したわけだが、映画というよりはテレビでやっているドキュメンタリーといった感じだった。
もう少し深く掘り下げてほしかった。
可もなく不可も無くサラっと路線の出来上がり。
可もなく不可も無く…。
木下恵介監督の半生のドラマです。
母の愛情、子の愛情はわかりました。
けど、描き方が浅い…事実だからこんなこんなものなのか。
それとも描写の仕方が弱いのか…。
それに、木下恵介の昔の作品をはさみすぎ。
90分位の作品の随所に恵介監督自身の作品差し込んでいたらこの映画作った監督の描きたいことが描ききれないんじゃない?と思っちゃう。
正味1時間強くらいしかこの作品自体はないんじゃないだろか。
出ている役者さんがいい人ばかりなので残念…。
特に、濱田岳は相変わらず存在感あり。
いい感じです。
サラっと見ましょう。
自分は心が腐ってるのか。
予告を観てコレは感動出来るに違いないと劇場まで足を運んで観てきたワケですが、自分の心は腐ってるのか?ってくらい何も感じなかったです。
作りたい映画が作れない時代に翻弄された主人公。病気の母をリアカーに乗せて山を越え疎開させる兄弟と便利屋。
申し訳ないくらいに何も伝わっては来なかったです。
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