「情けない大人を受け容れる子供。」メイジーの瞳 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
情けない大人を受け容れる子供。
なんとも胸をしめつけられるような作品だった。
子供っていうのは本当に生まれる場所を選べない。
子供好きでゆとりのある両親の元に生まれたなら、
メイジーのような思いをする子供はいなくなるのだろうか。
珠玉のコメントがチラシに寄せられていた。
内田裕也と樹木希林の娘・内田也哉子の、まるで我が家を
見ているようだった…という、かなりリアルな感想である。
以前、松田聖子の娘・沙也加の母に対するコメントを聞いた
時も同じように思ったものだが、とにかく忙しい両親の元、
ほぼ一人ぼっちで過ごす期間の長い子供はかなり辛抱強い。
そして冷静に大人達を見ている。第三者目線で語れるほど。
ロックスターの母(J・ムーアってのも凄いキャスティング)と
美術商の父(S・クーガン!)との間に生まれたメイジーだが、
おそらく生まれて以来、明けても暮れても夫婦は喧嘩ばかり。
罵り合いの続く中で眠り、目覚めるメイジーの暮らしぶりに、
見ているこちら側まで気が滅入る。何なんだ一体この家は!
やがて離婚する両親だが、互いに親権を譲らず、メイジーは
10日間ずつ、彼らの家を行き来することに。
程なく父親は、元々ベビーシッターだったマーゴと再婚。
すると母親も、バーテンダーのリンカーンと再婚(バカな!)
自己愛しか持たない人間が相手を思い遣れるはずがない。
当然次のパートナーとも喧嘩が絶えなくなり、関係が冷える。
ここでもメイジーは、じっと大人達を観察する。
自分を可愛がってくれるマーゴとリンカーンが大好きになった
メイジー。しかし彼らは本当の親じゃない。そこまでの権利が
彼らには持てない。親権を主張してはメイジーを振り回す両親。
特にロックスターの母親は、都合のいい時だけ逢いに来ては
メイジーを連れ回す。学校の送り迎えにも行かず、それぞれの
パートナーに子育てを押し付けては、仕事に没頭する両親。
今まで独りにされても決して泣かなかったメイジーが、
ポロリと涙を流す場面、そして母親に決意を示す場面は必見。
どんなに好きでも、どんなに愛してくれても、ダメだこりゃ~と、
6歳児にして気付いちゃう悲劇。こんな切ない話があるか。
やがてメイジーが大人になった時、
彼女を大切に育ててくれた人のことも、身勝手だった両親のことも
しっかりと受け止める日がやってくるのだろう。
どうかこんな状況を生き抜くメイジーが幸せに育つことだけを、
あの愛らしい瞳に祈りたい。幸せは自分で掴みとるのよ、メイジー。
(どっちが大人でどっちが子供…。親を育て直した方がいいくらい)