劇場公開日 2013年10月26日

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「観てよかった!」ハンナ・アーレント ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0観てよかった!

2015年4月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

知的

ハンナ・アーレント
ドイツで生まれ、第2次世界大戦中にナチスの収容所から逃れてアメリカに亡命した哲学者ハンナ・アーレントの不屈の戦いを描く。彼女の親友役を『アルバート氏の人生』のジャネット・マクティアが好演。信念に基づき冷静に意見を述べた哲学者の勇気に胸を打たれます。

1960年、ナチス親衛隊でユダヤ人の強制収容所移送の責任者だったアドルフ・アイヒマンが、イスラエル諜報部に逮捕される。ニューヨークで暮らすドイツ系ユダヤ人の著名な哲学者ハンナ(バルバラ・スコヴァ)は、彼の裁判の傍聴を希望。だが、彼女が発表した傍聴記事は大きな波紋を呼び……。

本編中に、1961年にイスラエルでナチス戦犯として裁かれたアドルフ・アイヒマンの法廷の記録フィルムが挿入されている、このためストーリーは、分かりやすく歴史に疎くても入り込みやすい。
実際、私もハンナ・アーレントを知らなかったし、アドルフの裁判も知らなかった。

実に興味深く、何度も繰り返し観れる作品でした。心が揺さぶられるような作品。

ハンナが、とにかく厳しい。信念が強く揺らがない分、冷たく厳しく受けとめられそうだが、愛に溢れている、暖かい人に感じられた。

ナチの親衛隊であったアドルフは、ユダヤ人を何百人もガス室送りにしている。
エルサレムでの裁判は、この恐ろしい行為を行った人物が怪物であってほしかったのであろう。
だが、彼はただの平凡な人間だった。彼の供述に命令に従っただけだと繰り返している。

自分自身も収容所にいたハンナは、冷静に分析し、彼の思考停止が悪を生んだと書いたことから、アドルフ擁護とされ、毎日批判の電話と手紙にさらされる。

全く動じず、批判の記事にも目もくれず、ただ悪について思考し続けるハンナ。

また、彼女の文章にアドルフのユダヤ人収容所送りの背景にはユダヤ人指導者の協力もあったと明記の為、彼女の大事な友人からも批判を受け友人を失っていく。

それでも思考し続けるハンナ。

ラストの講義のシーンでは、自分の行為が何に繋がるか考えず行動すること(送り先がガス室かどうかなんてアドルフには関係なかった、彼はいかに効率よくユダヤ人を列車に積み込むかが、重要でありそれからあとは業務外だ。)悪人が悪を犯すわけではない、凡人が思考せず行うことが、悪に繋がる。
それが、悪の凡庸。と定義。

また、加害者も被害者も戦時ではモラルが低下し、善悪の境目がわかりづらく、それがまた悪を生んだとしている。

ラストの講義は、実に説得力がありいかに思考することが大事かも教えてくれる。

主演も素晴らしい演技だったが、この人物を知ることができて、大変勉強になった。映画に感謝。

ゆき