「全体主義の中の個人の位置づけを考えさせられる重い主題の映画」ハンナ・アーレント chakurobeeさんの映画レビュー(感想・評価)
全体主義の中の個人の位置づけを考えさせられる重い主題の映画
重い主題の映画でしたが、全体主義や東京裁判の歴史を持つ日本人にも深く考えさせられる内容の映画と思いました。
第二次世界大戦期に起こったナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺に関連して、戦後に捕らえられたナチス幹部アイヒマン裁判に向き合った一人のユダヤ系女性哲学者が主人公の映画です。
人がファシズム化して大量無差別虐殺の機械的部品とならないためには、「深く考える」ことが大切だとハンナは訴えていました。歴史的に見ても全体主義化したら個人でレジスタンス活動をするのは困難で、生活優先、長いものには巻かれろ、となるのが必然でしょう。そうならないためにも体制側が最も嫌う「自分で深く考える」ことで、早め早めに全体主義の芽を断つことが非常に重要だと考えてます。もっとも、自分だけが深く考えただけではファシズムを止めることは極めて困難ですが。
ユダヤ人収容所の中では、一部にナチス協力の役割をしたものの存在もハンナは明らかにしたのですが、これが世論の猛反発に遭遇して、今風に言うとネット炎上の状態になってしまうのですが、彼女はめげませんでした。表現の自由のためにも彼女はがんばりました。
ハンナが、若い頃、一時ナチス派とされた大御所哲学者ハイデッガーの愛人の一人だったのは意外でした。
イギリスがEU脱退を決めた今日、現代の民族(移民)問題が人種差別問題や新たなファシズムに向かわないよう祈るばかりです。
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