リンカーンのレビュー・感想・評価
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偉業を派手に盛り上げなかった、抑制の取れた偉人伝
粛々としているし、取り立てて派手な場面は抑えられた映画だけど、あれだけの長時間を一度も飽きずに観てられたのは、本当にスピルバーグも映画もすごいと実感しました。デイ・ルイスのリンカーンが素晴らしいのは勿論ですが、サリー・フィールドとスペイダーが個人的にはベストです。特にスペイダーの役は貴重なコメディリリーフですし、やりすぎると台無しにしちゃう難しい役柄でした(あれをやってのけるところが、名優なんだなと確認)。
かなり万全の体力で観るべきなのは確かですが、混迷のご時世にリンカーンのような人が上にいればどれだけ良いかを、思わずにはいられなかった。それぐらい憧れるほどのリーダーがそこにいました。
置いてかれそうになった
ジャンゴ、マンディンゴと奴隷制度が描かれた映画を見た流れで鑑賞。
知識不足で関連人物の名前を知らないので、
誰がどっちで何してるのか置いてかれそうに(汗
有名な人民の~とか奴隷解放宣言の後の話、
憲法の修正案(実質的な奴隷解放)を決議する
まで話。
トミーリージョーンズ演じる奴隷制度の強行の反対派は修正案を妥協案だとして共闘してくれない。思想は勿論リンカーンも同じだろうが、
現実主義なのでその妥協案を硬軟取り混ぜたやり方で実現を目指す。
反対するだけなら誰でも出来るし、正しいこと言うだけなら誰でも出来る。どんなことにもメリット、デメリットもある。そのデメリットだけ批判したり、実現不可能な理想論を語るだけではなんにも進まない。
クライマックスは
穏やかで強い男に見えるリンカーンが
悩み、揺らぎ、疲弊する中で
迷っていた心を定め、方向を仲間に力強く
指し示すとこらだと思う。
リーダーは未来に渡すバトンをギリギリ実現可能な所まで削ぎ落として具体的な行動に落とし込むと共に、最終的な未来像を提示しないといけない。
あの時代に相応しい素晴らしいリーダーだったのだろうと思う。
ただ映画としては割と地味で少々退屈もした。
平和か、正義か
あまりにも有名な奴隷解放宣言。 しかしそれは、法的に平等を約束するものではなく、効力もほとんどなかった。 彼が本当になした偉大な功績は、「アメリカ合衆国憲法修正第13条」の可決。
原文「第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とするときを除く。 第2節 議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。」
映画はこの憲法修正案を可決するまでのリンカーンの戦いを描く。
「人間は平等であるべき」という信念のもと、修正案を通過させたいリンカーン。
泥沼化した南北戦争に終焉がみえはじめ、南部が停戦を申し込むという噂がたつ。しかし、修正案を通過させれば奴隷制を維持したい南部が徹底抗戦に翻る可能性があった。
側近達も「平和か正義か」を秤にかけたときに、修正案通過よりも南部との停戦に傾きかける。 それでも揺るがないリンカーンは、側近達に敵対勢力、民主党の切り崩しに取りかかるよう命じる。 賄賂を使ったり和平を結びに来た南部の使者の存在をもみ消したりして、要するに裏工作させるのだ。
平和か正義か、正義のためなら多少の悪も許されるか。
卑怯者になりたくない!と軍に参加してしまった長男や、次男をなくした哀しみから戦争を早くやめてと哀願する妻に悩みながらも、それでも一時の平和より正義を選ぶリンカーン。
色々考えさせられます。
それよりも印象に残ったのは急進派のス ティーブンス議員。 「黒人に選挙権を」という、奴隷解放どころか何段階も飛び越した「とんでもなく過激な」主張をもち、 長年冷笑と嘲笑に蔑まされてきた彼が、リンカーンに「まずは修正案の通過に協力を」と説得される。
ややこしいところだが、リンカーンとス ティーブンスは思想のベクトルは一緒でも、 スティーブンスは修正案の内容には不満だったらしい。
浅学なので誤った見解かもしれないが、修正案は奴隷を禁ずるだけであり、 「どの人種も生まれながらに平等である」こ とをあきらかにするものではないから…だと思う。
「生まれながらに平等である」ことを証明するには選挙権が必要で、選挙権があればこそ、初めて国民といえるから。
そんなスティーブンスが、民主党議員から議会で証言を求めらる。
「あなたが求めるのは、人種の平等か。それとも、法の下の平等か」
もちろん民主党員は彼が「人種の平等」を望んでいることを知っていて、「リンカーン派」の牙城を崩すために質問したのだが、スティーブンスは「法の下の平等」と答えるのだ。
この場面は本当に重い。リンカーンに託したものの大きさがわかる。
その一方で、立法主義であるアメリカの本質的な姿が際立った一場面でもあった。 法が全ての国。
ダニエル・デイ・ルイスとスティーブンを演じたトミー・リー・ジョーンズ、二人の名演なくしては見られない。 派手な演出はなく地味だし、一言も漏らすまじと真剣に見ていないと、議会で繰り広げられていることの重大さに気づきにくい。
「解放されたらどうする?」との問いにリンカーンの黒人メイドは言った。
「わかりません」と。
「自由になることに必死で、 その先の道は誰も示してくれなかったから」 と。
結果を怖れてばかりではなにも変わらない。法が間違っているのなら、その法を変える勇気や信念を持つこと。常に疑問に思い、常に考えること。
この映画のリンカーン像が実像とどれだけ近いのかはわからないが、民主主義とは何かということを一考させられる映画だった。
言葉遊びしているだけ
総合60点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:75点|音楽:65点 )
どのような状況で何が行われているのか、事前知識が無いと理解が難しい。たくさんの人物が登場し、それぞれの立場がある。グラント将軍・リー将軍くらいしか知っている名前が出てこないのに、誰がいて何をしているのかもよくわからない。単にアメリカ近代史を履修していない私の知識不足が原因ではあるのだが、全体像を掴めず今一つ展開にはまれなかった。
そして一番の問題は、登場人物たちが数々の現実に直面してもなお歴史を作っているというよりも、どうも言葉遊びをしているだけのように思えたこと。聖書の言葉が出てきたり、ユークリッド数学が出てきたり、理想を主張したり、そんなことを語られるのがわざとらしい。それっぽいかっこいいことを言っているだけで現実感がないし、実際に起きていることへの緊迫感も薄い。これでは大問題に立ち向かって新しい社会を作ろうという本気の気概が登場人物たちから見えてこず、現場から離れた場所で現実に直面することもなくただ机上の空論を弄んでいるように思える。
だいたい激動の時代にこれだけのことをするのに主人公は何があっても悩みもせず苦悩もせず真っ直ぐに理想の道を進むが、それがそもそも嘘っぽい。本当にこのやり方でいいのか、理想が実現するのか、障害を乗り越えられるのか、政敵を打ち破れるのか、現実で本人が間違いなく感じたそのような心の葛藤やのしかかる重圧がここにはない。作品中リンカーン最大の問題に見えて本人が唯一感情をむき出しにしたのは、奴隷解放ではなく息子の軍隊入隊だったしそれが彼が目の前で直面した現実だし、そんな姿にはがっかりする。
そんなわけで登場人物にもあまり共感も出来なかったし、全体に質感は高いが話だけしている展開に盛り上がりも少ない。長い映画だし途中ですっかり飽きてしまった。
リンカーンという人
こういう映画を観るのは初めてで、政治に詳しくない私にはちょっと難しかったです。
ですが彼のやろうとしたことがとても素晴らしいというのは分かりました。
今まで私の中ではとても偉くお固いお方だと思ってましたが、彼がたまにジョークを言ったりして皆を笑わせてたのも意外でした。
この映画を観ることで彼の知られざる素顔が見えてきたりします。
歴史誕生
見ていて第一印象は難しいだった。
南北戦争、そして当時の政治の動きの知識を少ししか知らなかったから分からないこともあったが、段々と歴史が動いていくのを感じ、リンカーン大統領の最後までを知ることができた。
リンカーンの人間的な魅力に溢れる作品。
良かった。
アメリカ合衆国憲法第13条の修正が主題の本作。
リンカーンの政治家としての側面、家族の長としての側面が重点的に描かれているため、伝記上の人物を血の通った人物として感じられ、それだけで新鮮でした。
政治家の側面。
作中のリンカーンは語りかけ理解を求めるスタイル。
彼の経験、または歴史上の逸話を基に議論を整理し相手に理解させる。
主演のダニエル・デイ=ルイスは容貌が似ているだけでなく、話し方、間の取り方、そして身振り手振りが非常に上手く作中のリンカーンに惹き込まれます。
また、彼が理念の実現のために我々が持つイメージとは異なる政治的対応を採る姿は驚きであり新鮮でした。
そして家族の長の側面。
本作では妻、長男、四男が登場しますが、彼らはリンカーンの人間的な面を代理で表現する存在と言えます。
長年連れ添う妻は、彼が表面には出さない悲しみ、苦しみを代わりに表わす。
大学に通い離れて暮らしていた長男は、世間の評判に晒され身悶えする姿を代わりに表わす。
幼い四男は世間から隔離された存在として、彼が本来持つ家族への愛情や接し方を示す存在となっています。
リンカーン大統領を多面的に描く本作。
惜しむらくはアメリカ国民ならば当たり前のリンカーンに係る知識が不足していたこと。
リンカーンの経歴(特に南北戦争前後)や奴隷制度の現実を前知識として持っておくと更にグッとくるのでは、思います。
奴隷制度の現実を描いている作品としては、最近の作品であれば「ジャンゴ 繋がれざる者」、旧作であれば「マンディンゴ」や「ヤコペッティの残酷大陸」があるかと。
作中、自らが信じる大義のためとはいえリンカーンが踏み越えなかった一線を意識して観る見方もあり、色々な発見のある作品でした。
少なくとも作中の彼は自身の承認欲を満たすことが目的では無かったのは確かかと。
オススメです。
人の信念とは
奴隷条項撤廃を目指す憲法修正案の下院可決を巡る時期を軸に映画は展開する。リンカーン大統領を取り巻く家族、政治家、軍人などの人間群像が丁寧に描かれる。彼の信念は決して単純なものではないだろう。向かう場所がわからない船に乗っている夢としてそれが象徴的に描かれる。政治家が酷い現実に勝利するため進む道は容易ではない。奴隷解放の名のもと南北戦争は多大な犠牲を国民に強い続けている。さらに政治活動は家族に強く影響する。妻や成長期あるいは幼い息子たちとの関係は決して幸せなものでなくなる。特に苦しい最中でも例え(ユークリッド定理など)で物事を分かりやすく庶民に説明したり、会議での行き詰まりでユーモアを忘れない大統領の姿に感動する。
眠気に耐えて…
自分には難しかったです!
キャストと監督で面白いだろうと思って、映画館で見ましたが、話の流れもダラダラで盛り上がりシーンもなく、、、
寝なかった!寝なかったですが、眠かったです。。。
感動もあまり得られず。
議会のシーンが多く、
結局リンカーンが何をしたかなんて入ってこず。
入門編ではないようです。
憲法修正案を巡る政治劇
リンカーンくらい有名な、いわゆる偉人の伝記映画を作る際にに重要なのはやはり“切り口”だろう。『JFK』のように暗殺事件の経緯を追う作品にすることも出来ただろうし、大統領に上り詰めるまで、あるいは南北戦争にフォーカスすることも出来ただろう。
しかし、スピルバーグは憲法修正案第十三条通過を巡る政治劇に仕立てた。
スペクタクルな要素は少ないし、スピルバーグ作品としてはとても意外だったのだが、この選択がとても良かったと思う。
修正案通過には、三分の二の賛成票が必要。
共和党内も急進派と穏健派に分かれ一枚岩ではなく、民主党議員の賛成票がどうしても必要であり、この多数派工作は簡単な仕事ではない。
リンカーンはその一方で和平案の協議も秘密裏に進めていた。
このコツコツした積み重ねがあったからこそ、修正案通過のクライマックスには胸が熱くなる。
今作を観ると、リンカーンが政治家として如何に大胆で優れていたかがよく理解できる。
リンカーンといえば、ゲティスバーグぼ演説が有名だが、この作品も名セリフの宝庫。
このセリフを言えるなんて役者冥利に尽きるんじゃないだろうか?
難しいです。
この作品は、難しい内容で、しかも、大変長く、とても疲れましたが、とてもいい作品だと、私は、思います。なぜなら、役者さん達の演技が、よく、内容もこっていて、よかったと、私は、思います。中でも、ダニエル・デイ=ルイスさんの演技は、素晴らしかったです。この人の白熱された、演技には、圧倒されました。また、この作品をみて、リンカーンという人物を尊敬するようになりました。今度みるときは、きちんと、アメリカの歴史などを、勉強して、みたいと思います。
理想を叶える為には・・・
スピルバーグ監督作品だったので、きっとリンカーンの生涯を描いた派手な大作伝記物なんだろうなと思いつつ鑑賞したのですが、こ、これは・・・何と地味な・・・。
まあスピルバーグもたまにはこう言う映画を作るんだなと、ある意味感心させられた部分はありましたが、とにかくビックリするぐらいエンタメ性はほぼ皆無でしたから、2時間30分・・・見終わって、相当疲れましたね・・・。
しかもほとんどが憲法第13条の修正案を可決させるまでの政治ドラマに焦点を当てた内容になっていましたから、間延び感は半端じゃなく、正直何度も睡魔に襲われそうになってしまいました。
ただしつまらなかったのかと言われればそうではなく、アカデミー賞を賑わしたり、たくさんのレビュアーさんが高評価をしているように、政治ドラマとしては物凄く見応えのある内容になっていたと思いましたよ。
真の平和は綺麗ごとだけでは勝ち取れない、政治的な裏工作をしまくってでも真の平和を勝ち取らなくてはならない・・・奴隷解放に命を懸けたリンカーンのその執念・・・見応えたっぷり、とても味わい深い作品になっていたと思いました。
でも、やっぱり疲れますね、こう言う映画は・・・。
ダニエル・デイ・ルイス(リンカーン)・・・見た目からしてほぼリンカーンそのものでした。
しかも表情、しぐさ、風格、どれを取ってもまるで大統領がそこにいるようで、なるほどアカデミー賞を獲得したのも納得の存在感だったなと思いました。
この方の演技は、いつもながらに物凄い説得力を生みますね。
サリー・フィールド(リンカーンの妻)・・・とにかくイライラさせられましたね(苦笑)
それだけ演技がうまかったと言うことなのでしょうけど。
それにしても、まあ家庭を顧みない大統領にも勿論問題はありましたが、奥さんちょっと精神的に病みすぎでしょうよ・・・って、状況を考えれば精神的におかしくなるのもある意味当然か。
ジョセフ・ゴードン・レビット(リンカーンの息子・ロバート)・・・正義感あふれる長男を好演。
戦うことが美学とされたこの時代、自分だけ血を流さないのはやっぱり我慢ならないものがあったのでしょうね。
結局4人の子供の中で一番長生きしたと言うのですから、何とも皮肉な話ですね・・・。
ガリバー・マクグラス(リンカーンの息子・タッド)・・・無邪気で本当に可愛らしかった!
これなら確かにいくらエイブラハムと言えど、それは溺愛したくもなるでしょうな。
ジェームズ・スペイダー、ブルース・マッギル、ジャレッド・ハリス・・・彼らが出ていたのは一応確認出来ましたが、何の役だったのかはさっぱり・・・。
他多数・・・全く誰が誰なのか見分けが付かずでした(苦笑)
デビッド・ストラザーン(ウィリアム)・・・彼だけは何とかリンカーンの参謀的存在を演じていたこともあってか一応は認識出来ましたが、印象に残るほどでは・・・。
トミー・リー・ジョーンズ(スティーブンス)・・・とにかく気難しくて物凄く頭の固い男でしたが、その感じがとても似合っていましたね、ヅラは似合ってなかったですが(笑)
正直リンカーンそのものよりも、彼に纏わるシーンの方が個人的には思いっきりツボでした。
彼が奴隷解放に拘った理由を知った時は、ちょっと熱いものが込み上げましたよ・・・。
理想的な世界を作る為には、理想的な政治をやっていたのでは勝ち取れない。
講釈なんかどうでもいい、結果が全て・・・それが政治なんですなぁ。
日本の総理大臣さんも、よろしくお願いしますよ・・・。
デモクラシーとは何か?
単純なストーリーではあるが、俳優の演技で見せている。歴史背景などを知れば知るほど楽しめるかもしれない。なにはともあれ、法制定をめぐる非常にパラドキシカルな展開は非常に興味を持てた。デモクラティックな概念を再考し整理するにはうってつけ。
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