劇場公開日 2013年3月16日

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シュガーマン 奇跡に愛された男 : 映画評論・批評

2013年3月5日更新

2013年3月16日より角川シネマ有楽町ほかにてロードショー

さまざまな人間の夢、思い、時間が作り上げる「ロドリゲス」という物語

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「シュガーマン」という人のドキュメンタリーかと思ったら、それは歌のタイトルで、70年代にリリースされたその歌を歌ったロドリゲスという人のドキュメンタリーであった。アメリカのシンガーソングライター。しかしアメリカではまったくの無名。一方、南アフリカではこの曲が大ヒットして国民的アイドルとなった。という極端な状況が生み出す認識の落差が、この映画のエンジンである。

前半は、70年代に彼と時間をともにした関係者たちが、今は行方不明のロドリゲスについて語る。ロドリゲスのさまざまな死亡説さえ、そこには登場する。それを語る人々の表情は、実現されなかった夢を夢見る人の悲しみと憂いと郷愁に満ちたそれであるにも関わらず、どこか若々しくも見える。実現されなかった自分たちの夢を、彼らの中に生きるロドリゲスだけが実現してくれる、そんなねじれた希望の木霊(こだま)が、彼らの言葉と表情を作り上げているようだ。彼らが過ごしたいくつもの時代が重なり合って、それが「ロドリゲス」という人物と物語を作っているのだ。彼らの瞳の輝きが、それを語っている。

だがもちろんこの映画はそれでは終わらない。これは何と言ってもロドリゲスのドキュメンタリーなのである。後半は、夢見がちな人々の表情とは打って変わって、ロドリゲスという現実が登場する。その対比が、更なる物語を作り上げる。一体どんな物語かは見てのお楽しみ。歌はそれを聞いた人たちの中で生き続けるのだと、そんなことを言いたくなる映画だった。

樋口泰人

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