劇場公開日 2013年9月13日

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「何故、イーストウッドの名作のリメイクでなければならなかったのか」許されざる者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5何故、イーストウッドの名作のリメイクでなければならなかったのか

2013年9月19日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

実に評価が難しい作品である。

一本の映画としては見応え充分。
演出はどっしりと構え、役者も熱演。
アイヌや明治初期の背景を絡め、巧く日本の風土に溶け込ませている。
雄大な映像も素晴らしい。

だけど、やはりどうしても払えきれない違和感が。
何故、イーストウッドのリメイクでなければならなかったのか。
オリジナルは至高の名作。いくら才ある日本の映画人が尽力しても、太刀打ち出来ない事は分かり切っている筈である。
ならば、日本オリジナルの時代劇として作った方が、絶対に評価も上がった事だろう。(実際、サブエピソードで描かれるアイヌの悲劇をメインに据えたオリジナルの時代劇の方こそ見たいと思ってしまった)
設定が似ている点についても、オマージュを捧げた事にすれば、イーストウッドと渡辺謙は繋がりがある訳だし、それすら敬意として評価される。
リメイクにした時点で、この映画は自らハンデを背負ってしまったのである。

演出も演技も悪くはないが、かと言って手放しで絶賛には至らない。
まず、演出面。イーストウッドの演出はドライで緊張感溢れ、格調高く深淵なものだった。李相日の演出も緊張感はなかなかだったが、感情をなぞる。これは日本人の感性に合わせたものなのだろうが。

渡辺謙は静かに怒りがこみ上げる熱演を見せてくれるが、伝説の人斬りの過去を背負った枯れた佇まいにはちょっと乏しい。
佐藤浩市は暴力的な狂人にしか見えなかった。ジーン・ハックマンは善と悪の不条理を感じさせたが。
役者陣では、柳楽優弥が印象に残った。

駄作ではないし、決して“許されざる映画”でもない。むしろ、好きなタイプの映画である。
でも…。

さっきから良いと言ってみたり否定してみたり、意見がふらつき大変恐縮だが、感じた事を思った通りに書いたまで。
なので最初に記した通り、評価が難しいのである。

(それでも、来年の日本○カデミー賞では高く評価される事だろう。ほとんどの部門でのノミネートはまず間違いない。それどころか、大量受賞も…?)

リメイクの宿命で、どう捉えるかは見たアナタ次第。

近大