「三池崇史版『ダークナイト』。 わざと無能なSPを警護につけた説。」藁の楯 わらのたて たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
三池崇史版『ダークナイト』。 わざと無能なSPを警護につけた説。
10億円という懸賞金がかけられ、日本国中から命を狙われる少女暴行殺人犯、清丸国秀の移送・護衛を任せられた警察官5人の奮闘と、その裏に蠢く陰謀が描かれるクライム・サスペンス。
監督は『クローズZERO』シリーズや『悪の教典』の三池崇史。
主人公であるSP、銘苅一基を演じるのは『世界の中心で、愛をさけぶ』『おおかみこどもの雨と雪』の大沢たかお。
殺人犯、清丸国秀を演じるのは『DEATH NOTE』シリーズや『借りぐらしのアリエッティ』の藤原竜也。
まず、こういった派手なサスペンス・アクションを作ろうとした心意気に花丸!💮
まぁ正直かなり問題のある映画だとは思うけど、予算や撮影場所の限られる日本映画界にしてはすごく頑張っていると思うし、こういう映画を徹底的に否定していたらますます邦画がつまらなくなると思うので、個人的には褒め倒したい作品です。
本作の悪役である清丸国秀。
コイツがもう救いようのない人間のクズ!
『カイジ』とかそういうレベルではない、邪悪の権化である。
常識では測れない狂人が、身柄を拘束されながらもその態度や言動で周囲の人間を混沌の渦に巻き込んでゆく、というのは如何にも『ダークナイト』以降のクライム・サスペンスだなぁ、といった感じがする。
爆発したトラックのシーンとか、まんま『ダークナイト』で観た気がするし。
多分監督は『ダークナイト』と『セブン』を観まくってこの映画を作ったんだろう。
クライマックスの、血まみれの清丸を連行するという絵面は、リドリー・スコットの『ブラック・レイン』を思い出した。
もしも清丸国秀を松田優作が演じていたら、本作はとんでもない傑作になっていたんじゃないかな?
松田優作と比較したら分が悪いとはいえ、本作の藤原竜也は素晴らしかった!
とにかく最高に最悪なサイコパスを、見事に演じ切っていた。
「力み過ぎだろ!もっと力抜けって〜💦」と思うことも多い藤原竜也の演技だが、この役に限ってはこの大袈裟な演技がぴったりハマっている。
ちょっと間違えればコントになってしまうほど、エキセントリックなキャラクターがギリギリで成り立っていたのは、偏に藤原竜也の演技力の賜物でしょう。
清丸国秀の面白さに比べ、主人公である銘苅一基や、相棒である白岩篤子の「職務と良心の間で苦悩する警官」という書割的人物像は、意外性もなく退屈なものだった。
そして超一流のSPという設定のはずなのに、とにかく油断しすぎな2人。さらには、馬鹿馬鹿しいほどに感情的。
このバカ2人なら清丸を守りきれないだろうと踏んで、蜷川があえて警護の任につかせた、という説が自分の中では濃厚である。
清丸は心神喪失という理由で無罪判決になる可能性が高い、とかの設定が有れば、銘苅や白岩の葛藤に現実味が湧くんだけどなぁ〜。
どうせ死刑になる奴なんだから、うじうじ悩まずに任務を遂行すれば良いやんけお二人さん、と観客に思わせてしまうというのは、シナリオの大きなミスだと思う。
5人組のアンサンブルは結構好き。瑛太の弟が無駄に攻撃的だったのは謎だけど。
岸谷五朗と伊武雅刀という渋い人選、素敵。
誰が裏切り者なのかわからない展開は、結構スリリングで楽しかった。
資本主義への批判や私刑の否定など、なんかメッセージ性もあることにはあるんだけど、どうせならそんなん取っ払って、エンタメ全振りで作ってもらいたかった。
悪の忍者集団とか、アウトレイジな極道軍団とかが襲撃してくるバカ映画として制作されていたら、もっと評価が上がっていた気がする。
何でもかんでも小難しく作れば良いというものでは無い。
利口ぶったテーマ性は、映画の出来がガバガバだと余計にバカっぽくなってしまうなぁ😅
殺害出来なくても、その意思を行動で示せば1億円、という設定は上手い。
多分現実でこういう事が起こっても、日本国民は静観していると思うけど。
まぁまぁ楽しめたし、こういう映画は邦画に絶対必要。
結構好きな作品です。
後半はかなり間延びしていたので、もう少しコンパクトに纏めてくれていたら、なかなかに良作になったかもしれない。ちょっと惜しい。
これから人をおちょくる時は、ダブルサムズアップと馬鹿面でいこうと思います🤣
あれムカついたな〜!