「可愛い母に愛に行く。」ペコロスの母に会いに行く ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
可愛い母に愛に行く。
キネ旬邦画作品1位になったので特集上映された。ラッキー!
ぺコロスとは何ぞやと思ったら、主人公の頭のことだったのね。
岩松了はさすがの演技力で飄々と息子を演じ、母親であるみつえ
を演じた赤木春恵ときたら、まぁ可愛いこと可愛いこと!
多くは認知症である母親の介護に重点を置いた作品でありながら、
所々に愛嬌のある笑い、日常の可笑を存分に取り入れた愛情作品。
取り立てて大きな渦波はないものの、介護というテーマと長崎の
風情と人情をコミカルに綴る、漫画独特の表現方法が活きている。
冒頭で、主人公の岡野さんが描くぺコロスと母の日常が出てくるが、
この絵を見て「まぁ、愛らしい」と思わない人はまずいないだろう。
身内を可愛く描けるのは、本人が愛情溢れる人物だからである。
なぜ離婚したのかは分からないが、ぺコロスも息子も実に温かい。
実際に介護を経験している方から見れば、なんて生温い!と思う
場面もあるだろうが、いやいや、よく観ていくと…結構辛辣である。
介護生活がいかに大変かは、これでもかと画面から伝わってくる。
その大変さをユーモアで巧く包んで生きる糧にしているのがいい。
認知症の母親も前向きなら、息子も孫もどこまでも前向きである。
振り返る過去も辛い出来事から懐かしい出来事まで悲喜こもごも、
それを切なくも楽しく思い返せるということが成長の証なのだ。
なんだかもう、極楽湯に浸かりながら説教されている気分である。
ハゲ三昧か^^;と思わせるオヤジたちの共演、仰々しい笑いもあり、
何やってるんだよ、この演出は。なんて思わせるシーンまである。
素晴らしい映画というより「そこそこの映画」なところも、またいい。
過去のファンタジーと現実の狭間で豊かに生きることができたら、
確かにボケることも悪いことばかりじゃないのかもしれない。
だけど、そんな風に思える主人公が、そう思わせるこの演出が、
母に「会いに行く」ことを「愛に行く」ことに変換して見せているのだ。
鑑賞中、まったく涙が出なかったが(予想外)
エンディングのラスト、ご本人と母親がおでこを合わせる姿で爆涙。
(原田姉妹、加瀬くんもよかった。そう、生きとかんば!何が何でも)