劇場公開日 2013年6月15日

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「しごく平和な映画だ」俺はまだ本気出してないだけ マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5しごく平和な映画だ

2013年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

ダメな親父という以前にダメ人間。よくここまで生きて来られたというシズオを、堤真一がこれが地かと思うほどのなりきりようで笑わせる。
父親役の石橋蓮司との漫才のようなやり取りにも大いに笑う。

この二人もいいが、山田孝之と濱田岳が強烈な個性で話にメリハリをつける。「鴨川ホルモー」(2009)で共演した二人だが、それぞれフリーターと編集者となってシズオに絡んでいく。今作では顔を合わせるシーンがないこのコンビだが、さまよえるダメおとなのやる気のない物語の進行役のような存在だ。

40過ぎにもなって漫画家を目指しても世間はそんなに甘くはない。現実的には馬鹿である。けれどもシズオは、不可能という言葉も忘れてしまったようで、なんとでもなると思っているところが凄い。
だからといって、福田雄一監督は「若者よ、諦めるのはまだ早い」というような気負ったメッセージを投げかけるでもなく、案の定、本気出したところでダメなものはダメみたいな気だるいダメおとなをひたすら傍観してみせる。

だが、シズオはもともと本気を出してきた。本気で思うがまま生きてきた。
よその子供からも軽蔑されるようないい加減な生き方だが、本来、誰もが望んでもできない人生を歩むシズオに、少なからず羨望を持って映画を観た人が多いに違いない。

この世には、こどものように生きられる人もいる。
ひょっとしたら、本気で望めばそんな生き方が手に入るかもしれない。

p.s.ずいぶん早くから宣伝していると思っていたら《日活創立100周年記念作品》の1本だったんですね。
100周年おめでとうございます。

マスター@だんだん