「【”あの世とこの世”の接点、不可思議な関係性を描くことに拘る黒沢清監督が、エンターテインメント作品として世に送り出した作品。だが、公開当時、その世界観への評価は大きく分かれた作品でもある。】」リアル 完全なる首長竜の日 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”あの世とこの世”の接点、不可思議な関係性を描くことに拘る黒沢清監督が、エンターテインメント作品として世に送り出した作品。だが、公開当時、その世界観への評価は大きく分かれた作品でもある。】
ー黒沢清監督は、”あの世とこの世”の接点、不可思議な関係性に拘り、独特のスタイルで映像化して、海外から高い評価を得ていた。但し、国内での評価は・・。
原因は明らかで、エンターテインメント作品としては、今作までは内容が少しだけ、分かりにくかった・・、大衆に受けにくい内容であった事に起因すると思われる・・。
私もその一人で、地元のシネコンで今作を鑑賞した際には、主演が佐藤健さんと綾瀬はるかさんであるので、エンタメ王道作品かと思い鑑賞したが、黒沢清ワールドを脳内で消化しきれず、??で劇場を後にした・・。
その後、「岸辺の旅」「クリーピー 偽りの殺人」「散歩する侵略者」を劇場で鑑賞し、どの作品も、大変面白く鑑賞した。
そして、黒沢監督の初期作品を数作観てこの稀有な才能を持つ監督が一貫して描いてきたことが仄かに分かり始めた・・。
初見時評価を敢えて定量的に示すならば、3.0。
黒沢清監督を数作鑑賞後、久しぶりに今作を鑑賞して総合的に4.0と言ったところだろうか・・。ー
■簡単な粗筋
・フジタコウイチ(佐藤健)はダークテイストの絵柄で人気のあるアツミ(綾瀬はるか)と暮らしている。
・一年後、観客にはアツミがスランプに陥り、自殺を図り昏睡状態である事が示される。
・コウイチは、アツミを目覚めさせるために、先端医療センターで”センシング”という、他者の意識に入り込む施術を受ける。
ーこの辺りの医療機器の描き方が、「回路」や「ドッペルゲンガー」と同様にチープで、作品の低評価の一因になったのでは・・、と久しぶりに鑑賞して思った。他者の意識に入り込むという似たテーマでCN監督が「インセプション」を発表し、世界を驚愕させたのは、今作の3年前である・・。ー
・コウイチとアツミは小学4年で、飛古根島で出会っているが、コウイチは父親の”仕事”の関係で都会から移り住んだ少年で、アツミに想いを寄せている少年、”モリオ”から敵視されている・・。(この件は、再後半の明かされる・・)
・コウイチは昏睡状態のアツミの意識に何度も”センシング”で入り込み、アツミの意識を戻そうと努力する。そして、実際に飛古根島に渡り、アツミが”小学4年の時に書いた首長竜の絵は完ぺきだった・・。探して・・。”という言葉の下、その絵を島内で探す。
・コウイチはアツミの意識を囲う、霧を通り抜けると、そこは飛古根島だった。そして、謎の少年が現れ、岩場の海岸に導かれる・・。
・飛古根島でコウイチとアツミは小学4年時に起きたある事故・・。謎の少年は、”モリオ”であり、アツミが書いていた、漫画ルーミー”ROOMI"は”MORIO"のアナグラムである事が分かる・・。
<ここからは、実際に見て頂きたいのであるが、コウイチとアツミの関係性の真実が露わになる過程は、久しぶりに鑑賞すると、成程・・と腑に落ちるし、”フィロソフィカル・ゾンビ”の使い方など、「回路」で多用されたジャパニーズ・ホラーテイストも仄かに描かれ、黒沢清監督独自の世界観はキチンと表現されていたのだなあ・・、と初鑑賞後7年後に理解できた作品。
”けれども、今作を初めて見たら、ナカナカ理解は難しいよな・・”とも感じた作品でもある。>
<2013年6月 シネプレックス岡崎(現ユナイテッドシネマ岡崎)にて鑑賞・・。
鑑賞記録もなし・・。>
<2020年10月 別媒体にて再鑑賞>