劇場公開日 2024年3月1日

  • 予告編を見る

「美しき日本人の佇まい」舟を編む 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5美しき日本人の佇まい

2022年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2013年。石井裕也監督。原作三浦しをん。
この映画をもう一度観ようと思ったキッカケは、『博士と狂人』を観たからです。

『舟を編む』は『博士と狂人』より、3倍感動したな!
『舟を編む』はちゃんと辞書作りのディテールが描かれていたな!
出てくる人間が《心美しき人間ばかり》だった。
そう思うと、観たくて堪らなくなりました。
やはり思っていた通りの、美しき心の日本の映画でした。

2005年。
玄武書房では「大渡海」と言う書名の辞書を編纂しています。
編集責任者は松本先生(加藤剛)。
営業の西岡(オダギリジョー)
実力派編集者の荒木(小林薫)が定年を期に妻の看病専念のため退職。
穴を埋めるため選ばれたのが、変人でピュアなカタブツ馬締(まじめ)光也だった。
馬締を演じる松田龍平。
思うに彼のキャリアで最高の出来栄えのハマり役でした。

馬締が寝食を忘れて辞書作りに打ち込む姿。
人間には神職がある。
それに気づき打ち込めることの幸せを痛感します。
馬締が「大渡海」と出会わなければ、馬締の人生は潤いなき索漠としたものになってた
かも知れません。
社内人材を物色して馬締に目を付けスカウトする下り・・・
最初に目を付ける西岡のガールフレンドの三好(池脇千鶴)や、
「右」と言う文字の説明・・・バッチリ答えたのは馬締ひとりだったし、
ともかく馬締に辞書作りは「天職」と言う言葉しかありませんね。
そして下宿のお婆さん(渡辺美佐子)の孫・香具矢(宮崎あおい)と、馬締くんの
ロマンス。
良い話ですね。
巻紙にしたためられた筆書きのラブレター。
香具矢さんは結局読めずに、板前の大将に読んでもらう羽目になります。
コミケ障害気味の馬締くんにも《春が来た》
人生は諦めちゃおしまいです。
そのことも教えてくれます。

辞書作りを通して、生き甲斐とは?努力とは?継続とは?
成就することの達成感とは?報われるとは?
「大渡海」は17年かかって、とうとう完成します。
最後の追い込みは戦争でしたね。

多くのことを学べる、そして暖かい温もりのある美しい映画です。
観ていない方は是非ご覧くださいませ。

琥珀糖
かせさんさんのコメント
2024年3月3日

松田龍平くん、よかったですね。
しっとりとした辞書編纂の物語に、フィットした演技存在感でした。

かせさん