祇園の姉妹(1936)のレビュー・感想・評価
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暗い京都の街
【評価不能】
本作は、キネマ旬報ベストテンの第1位にランクインしたこともあるという邦画史上の金字塔なのですが、偽らずに言えば、自分にはまだその魅力が理解できませんでした。少し調べたところでは二人の批評家が、山田五十鈴の女優としての才能が最もよく発揮されたものとしてこの作品を評価していました。私が全く気付かなかった点です。超一流の役者を観ても素通りしてしまう私には、まだまだ映画の鑑識眼が足りないみたいです。もう少し色々な映画を観てから出直してきたいと思いました。
作品内容について言えば、まず、山田五十鈴が最初に下着姿で登場するのは、彼女の子供っぽさを強調するためかなという感じがしました。キャミソール姿でも健康的なばかりで女性の色気がない。作中のほとんどの場面で、彼女は女性というよりお嬢さんという感じがしました。
それが終盤になって、姉が出て行ってしまってからは、急に大人びた姿を見せ始めます。客の運転手に呼ばれて身支度をするシーン、島田髷のかつらを被るシーンはとても艶やかでした。しかし、そのように大人になった途端に、男に復讐されて彼女は酷い目に遭います。子供は無責任で結構ですが、大人は責任を取らなければならないということです。
また、女学校上がりとされる山田五十鈴の役柄が、世間体より自己実現を重視するような、独立志向の現代的な女性として描かれる一方で、それとは対照的に、姉の方は世間体を非常に大切にする昔気質な女として描かれていました。女性の取り得る二つの道が彼女たちを通して表されているわけです。
しかし、最終的にはどちらの女性も男によって不幸にされてしまうわけで、だから結局、「どうすればええんや」としか女性は言えません。この作品のテーマは、単純に見れば芸妓への職業批判ですが、芸妓に対する社会的な蔑視という視点が全く描かれていないことから、より広く男尊女卑批判という意味合いを込めたかったのかなと感じました。作品内の美しい京都の町が、あのラストを見た後では、彼女たちを閉じ込める入り組んだ牢獄のように思えてきます。
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