「悩めるアメリカの現実が今明かされる!」テッド Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
悩めるアメリカの現実が今明かされる!
2001年の9月11日アメリカ同時多発テロが起きてから10年以上の月日が過ぎた、今もなお立ち直れずに苦悩するアメリカの姿が浮き彫りになっていて正直胸が痛んで、この作品は、笑うに笑えない映画だった。
がしかし、この映画にはそんな過酷ではあるが、現在のアメリカ社会が抱える負の遺産である、911後のイラクやアフガニスタン侵攻がもたらしたその傷跡が根源的な問題行動の源になっているとして描かれていて、その事で、この映画の主人公である30代のジョンや無二の親友であるぬいぐるみのテッド達と同世代のアメリカ人の多くの人々が苦悩していると言う事を間接的にシッカリと見据えて描いている事には大きな意味が有り、現在のアメリカではダメ男が単に流行りであり、物好きな女性にはダメ男も受け入れられて、今結構ダメ親父であるアラ30世代のジョンの様な男どもがモテテいると言うお話では無いと言う事が、この映画で理解されるのだ。
何故、一見して仕事もやる気が無いダメ男でも、只一緒に居て優しいだけで、出世欲も無いような男のジョンでも良いのか?
エロイ事以外の部分では全くの草食系男子の様に、仕事のヤル気の無い、出来ないダメ男の標本のようなジョンにローリーは惚れるのか?
それは、少しばかり幼稚で、子供じみた処があっても、素直で優しい人でいてくれさえすれば、幸せに暮らして行く事が出来ると言う、ここに今のアメリカ社会の女性が求めている本音が見え隠れしている様に私には思えたのだ。
それは当然、私にとっては、世相をハッキリと反映するのが映画の一つの役割と信じているので、その意味に於いても、この映画は良い意味で予想に反していた、案外出来の良い映画だったと言って良いのだ。
予告編を最初観た時は、只のエロ親父クマのお話しの一体何処が映画化する程良いと言うのだろうか?と疑問に思ったものだ。しかし、本題は違う処に隠されていたという訳だ。
「ロック・オブエイジ」も80年代のお話しで、何故、今はそこまで80年代を描いている映画が採り上げられ、受け入れられているのか?不思議で理解出来なかったのだ。
しかし、この映画で、テッドがクスリにハマってしまうのは、911後はクスリでもやらなきゃ、やっていられないと言う一言を聞き逃す事は出来ないのだ。
これは私の全くの個人的な予想なのだが、70年代は、ヴェトナム戦争が停戦しておらず、結構ヴェトナム反戦映画も多数描かれていて、90年に成ると、湾岸戦争が始まり、その後911が起きてからは、アメリカは下降の一途を辿り、今では経済も破綻し、中東からやっとの思いで、無事に帰国した筈の帰還兵が毎日平均40人以上自殺していてこれが今のアメリカでは大きな社会問題になっているのだ。
少なくともジョンと同世代の多くの若者が、911事件を目の当たりにして、イラク派兵に多数志願して行ったのだ。そして、あれから10年を経た現在帰還兵達はPTSDに苦しみ苛まれているのだ。ジョンやテッドがまるで夢遊病患者のように、クスリと映画に溺れて、現実逃避する様は、今の社会を否定したいと言う、この世代の人々を反映している様にも取れるのだ。
勤労意欲の薄いテッドが、働きたくないが故に、悪さをすればするほど、昇進して行くと言うのも、この映画ならではの、辛辣なブラックユーモアと言えるのではなかろうか?
これは、よくあるラブコメで、ジョンの恋愛絡みの、ぬいぐるみのテッドとローリーの二者択一と言う変形型の3角関係を描いたコメディーと観てしまうと、全く読み違えてしまうと私は考えるのだ!
そう、ジョンは、ボストン郊外の出身と言う事も、その1つの大きな裏付けなのだから!