「見守る実験。」マジック・マイク ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
見守る実験。
ソダーバーグ引退、なんていう記事が出てから地元のシネコンは
すっかりソダちゃん祭りと化している。
ソダーバーグは好きだから公開してくれるのは有り難いけれど、
こんなに早く引退…?なんかまた作りそうな気がするけどなー。
公開時にすっごく観たかった作品なので、すっ飛んで観に行った。
チで始まってムで終わる名前の(スイマセン、しつこくて)
C・テイタムにはやっぱりダンスの巧いお兄ちゃん(ゴメンね)しか
イメージが膨らまず、個人的にセックスアピールを感じる男優は、
残念ながら今作には一人も存在しなかった(これも計算ずく?)
そんな中、怪演してたのが、やっぱりこの人、M・マコノヒー。
見たい見たくないは別として(ホント申し訳ないけど見たくない)
アンタの気持ち悪い踊りは天下一品♪酸いも甘いも噛み分けた
人生の破綻者みたいな(いやビジネスでは大成功なんだけど)感が
身体全体から溢れる溢れる!もうどうにでもなってくれ感がピーク。
ついこないだ弁護士役やってたのにね。俳優ってこうでないとな。
常に実験映像的な作品を多く作るソダちゃんは、
今回もまったく甘い青春映画などには(内面的に)仕上げていなくて、
表面的にストリッパーの生活をなぞり、観客に美味さと気味悪さを
堪能させたのち、主人公にはスパーっとその世界から断絶させる。
は?どうすんの、これから?いや~それは自分で考えて下さいよ^^;
っていう、またこういう作りかよー!ってやつなんだけど、
だよね。人生ってのはこんな風に咲いて枯れていくものなんだから、
まぁ自分で考えてみるべきだわね。なんて説教垂れられてる気分に。
しかも冒頭から云々語ってはケンカしていたあの会話にて締め括る。
明日のパンにも困るくせして、まったくほのぼのとした会話!
やってくれるわね~今回も。と、すっかりやられてしまいました。
さて、男性ストリッパーの世界なんですが…(もちろん知りません)
今作の主人公を演じたテイタム君は実際に10代の頃やってたらしい。
そりゃ生活のため…?だとは思うけど、よくぞその世界を抜けて^^;
ダンス界~俳優世界へようこそ♪と華を拓きましたねー。
あまり好きな顔ではないんだけど、最近では演技力も格段に上がり、
ダンスの巧いお兄ちゃんだけではなくなってきている!
良かったね~。これでモテモテだね~と思ったら、そうか、あの時
「ステップ・アップ」で共演したジェナと結婚してたんだっけね。早っ!
ダンスが実を結んだ結婚生活、元がストリッパーに端を発した演技
だとしても、旦那が売れっ子になるのは嬉しいことじゃーないですか。
頑張れー。いつか転ぶかもしれないけれど、そしたら朝食を食べてさ。
若手有望株(ストリッパー業の)役だったA・ペティファー。
色男というよりはまだまだ初々しい感じで、日本人好みの甘いマスク。
やはり嫌らしさはまったく感じられず、若気の至りを絶妙に好演。
えぇっ、今作で共演したプレスリーの孫娘R・キーオと婚約ですか!?
何かすごいなぁ^^;皆さん非凡な経歴と世界観をお持ちの方ばかりです。
ひとつだけ、すごく印象に残った台詞が。
主人公マイクがアダムの姉ブルックに言う一言。
「まだ19歳だ。酒と女とギャンブルが楽しくて仕方ない年頃だろ?」
いやー。沁みるわその一言。こういうのが巧いんだ、ソダちゃんは。
遊べる時に遊んでおけ。でもハメを外しすぎて、人生台無しにしない
ように、しっかり見守る大人がいなきゃダメだったりするんだわね。
ブルックという姉さんは、そのあたりの分別と理解にあふれた人物で、
弟がストリップダンサーなんかになっちゃって、普通は気が狂うのを
よく見守ったよなぁ~と、そこをマイクもちゃんと見てたってことだわ。
見た目と職業で判断するな。なんていうけど、普通、判断されます(爆)
だけど、その子の本質を分かってあげられるのは限られた人間だけ。
こういう演出がね、すごく巧いと思うのだ。
(どの世界でも自分を必要としてくれるところへ人間はなびいていく)