「法か善か、放歌善果」レ・ミゼラブル(2012) uzさんの映画レビュー(感想・評価)
法か善か、放歌善果
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原作もミュージカルも何も知らずに鑑賞。
主人公は19年間服役したとのことだが、パン泥棒の罪は5年のみで残りは脱獄ぶん。
妹の子のためとはいえ盗んだのは事実だし、脱獄してるし、劇中で妹に思いを馳せることすらない。
まぁこの辺は改心してゆくのだろう、と甘受する。
しかしその後も、大事な行間が描かれないのでイマイチ乗り切れない。
働き口すらままならなかったのに、どうやって8年で市長にまでなったのか。
着の身着のまま逃げたのに、身なりは整ってるしコゼットを買い受けるお金も持っている。
バルジャンとコゼットが絆を育む描写はゼロ。
マリウスとコゼットは、会話どころか視線を交わしただけで「運命の恋」とやらに落ちる。
これで別離やら死やらを描かれても正直薄い。
個人的にエポニーヌの方に感情移入してしまうので、革命にも恋にも半端で結局実家に戻るマリウスは嫌い。
ラストでバルジャンが唐突に亡くなった理由も不明。
ミュージカルそのままなのか、すべてを歌で語ってしまうのも映画としては残念。
特にジャベールの最期は表情ひとつで見せてほしい。
迫力や情感に圧倒された場面もあったが、歌で尺を取りすぎていると感じるシーンも多かった。
全部歌わせることに拘らずに効果的に使えば、メリハリもついたし、前述の行間を挟む余地もできたのでは。
ジャベールをちゃんと「職務に殉じただけ」と描いたことや、銀の燭台を持ち続けているのは良かった。
何も考えずに映像と歌の力に身を委ねれば楽しめる。
しかし、群像劇のような描き方で誰一人として深掘りできていない点は評価できなかった。
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