「もっと知識を持たねば…」レ・ミゼラブル(2012) こばこぶせんさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと知識を持たねば…
2時間40分という長さを感じない映画だった。
音と映像の迫力に、これぞ劇場で鑑賞する映画、という感じ。
最初の船を曳く場面から感動と興奮。
ずっと歌い続ける映画だと聞いていたので、気持ちが高ぶった。
ずっと歌い続けるというのはよかった。唐突に気持ちを歌い始めたりするから、ミュージカルは変なのだと思っていた。不自然なのだと思っていた。ずっと歌い続けていたので、不自然さが無かった。むしろ、普通に会話するのが不自然に感じるくらいだった。
時間のこと。
長さは感じなかったのだが、話の展開が早すぎた。
やや深みに欠けた。話のあらすじを、話のうわべをすっとさらっていく感じだった。
仮出獄からも逃れるときの葛藤は?銀の燭台をもらったときの良心の呵責は?コゼットの引き取りを決めるまでの、心の動きは?
もう少し丁寧に感情を扱ってほしかった。
そう考えると、この2時間40分という長さが悔やまれる。もう少し長くても良かったのかもしれない。無理に一本におさめたのは苦しい。
予備知識ということ。
膨大な原作も、ロングランのミュージカルのことも知らずに鑑賞した。
だから、有名な曲というのも知らなかったし、有名な場面も知らない。
ジャベールが自分の正義の動揺に耐えかねて水路に身を投じる場面も、神父がバルジャンをかばい、銀の燭台をも渡す場面も知らなかった。時代背景についてもよく知らず、ああ資本主義が発展し始めた時期なのだなというのを画面から読み取れただけだ。それだけに、前述したように話の展開が早すぎるように感じたのだ。
ミュージカルを見ている人なら当然知っているあの展開も、あのキメ場面も、あのキャラクターも、あの歌も知らない。だから、楽しみきれなかったのかもしれない。
ミュージカルを見ている人が見ることを前提に作られた映画なのだろう。
ミュージカルでは見られない、細かい表情やこだわったアングルを堪能してくれ、そういう気持ちで作られた映画なのだと思う。
だから、予備知識を持っている人は本当に楽しめた映画だと思う(多少、イメージしていたものと違う!という違和感は持ったかもしれないが)。
自分の予備知識不足が悔やまれる。
もう一回、勉強し直してから映画を見直したい!今度は映画ではなく、ミュージカルを見たい!と思わせた映画ではある。
コゼット役のアマンダ・セイフライドは美しい顔と歌声だった。
ジャベール役のラッセル・クロウはごつすぎ。そして歌が、今ひとつ。声も伸びない。少し残念な感じ。
なんか、最後の場面、革命の反体制側の映像が多すぎ。
革命礼賛映画なのでは、と強く感じた。
旗を振りすぎで、映画の感動が、少し損なわれた。
予備知識不足とラッセルクロウと革命礼賛で減点1。