「監督はイングランド人です。」レ・ミゼラブル(2012) ジャワカレー澤田さんの映画レビュー(感想・評価)
監督はイングランド人です。
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いや、役者配分は最高なんです。しかも実際に歌わせることで、ほぼ全編歌いっぱなしという大技を実現しています。特にアン・ハサウェイは素晴らしい。
それじゃあ何でこんな低評価かというと...トム・フーパーはフランス的革命高揚感を理解してないみたいなんですわ。
そもそもレミゼって作品の主題は、人間の尊厳を守るはずの法が逆にそれを踏みにじっているという現実、ジャベールみたいな人間がまるで弱いものいじめのように庶民の心を砕いてしまっているという状況描写です。法と正義の狭間に押しつぶされる人々が集まって革命に向かう時、そこにフランス的高揚感が生まれるわけです。ところが本作には、それがほとんどない。
原因はフーパー監督が主題を見誤ったことでしょう。男女愛は確かに原作にも書かれていますですが、それがメインデッシュじゃない。おまけに本来の主題とはあまり関係のない盗っ人夫婦のキャラが立ち過ぎて、革命メンバーの影が薄くなっています。
そもそも最初からして、司教様に助けられるまでの過程がまるでダイジェストです。おまけにこの時のバルジャンはただの乞食と化してます。違うでしょ。ビクトル・ユーゴーが言いたかったのは「パンが食べられない怒り」じゃなくって、「人間の尊厳を踏みにじられた怒り」でしょ。メシのための革命は、バルジャンが逮捕される遥か前にもう終わってるんです。そういう意味で、フーパー監督はやっぱりイングランド人でした。
彼はレミゼに手を出すべきじゃなかった。それこそマイ・フェア・レディの方が向いていたはずです。
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