「見ごたえのある映画」汚れなき祈り mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
見ごたえのある映画
2005年に実際にルーマニアで起きた事件をもとに描かれた作品。
第65回カンヌ国際映画祭で女優賞と脚本賞を受賞しています。
「悪魔憑き事件」とあったので、多少、ホラーの要素があるのかと思ったら、完全なシリアスヒューマンタッチの映画でした。観た後にいろいろと考えさせられる、とても見応えのある映画でした。2時間半という長さの上、音楽やら効果音もほとんどなく、淡々と物語は進んでいきます。けれども退屈することはありませんでした。
幼少時、孤児院で共に暮らしたアリーナとヴォイキツァ。2人の少女が主人公です。ヴォイキツァは修道女として神に仕える身。アリーナはドイツからヴォイキツァと一緒に過ごしたい!という熱い思いでヴォイキツァに会いにきたのですが、アリーナの想いは伝わらず。ヴォイキツァは神の愛に包まれて暮らしており以前の彼女とは違ってしまっていたのです。(二人の関係は友達というよりも恋人に近かったような)そんなすれ違いがあり、ヴォイキツァを自分の方に向けることのできないアリーナが心を患い、激しく壊れていく。
最後まで観ると、誰が悪いのか?というはっきりした答えが出せません。修道院に身を置くことが出来なくなって、里親のところへ戻ろうにも戻れず、病院にも追い出される形になり、アリーナの身よりは頼りない兄だけ。そんな社会的な孤立もあり、アリーナは一度出た修道院に戻るけれども、そこでまた癇癪を起こしてしまい、結果、あのような不幸な結果となり。ヴォイキツァも神に仕える身といいながら、悪魔払いについては心のどこかで疑問を持っていたはず。最後に「アリーナ、逃げて」と縄をほどいたのだから。しかし、時、すでに遅し。不幸を招いた「汚れなき祈り」。世間を離れた修道院は別スポットであるかのようでした。
アリーナとヴォイキツァ、二人が出会ったとき距離感があるようで、距離が近すぎます。アリーナーは神への愛に目覚めていて、アリーナがそれを引き裂こうとするようにヴォイキツァを引き戻そうとする。ヴォイキツァはアリーナを突き放すこともなく、入院中(アリーナの)も、アリーナへの医者の質問に代わりに答えたり、何かと「世話を焼く」。二人は共依存のような関係。観ていてイライラもしますが、女優さん2人の演技は素晴らしかったです。ラスト、黒の修道服ではなく、普通のカーディガンを着て警察に向かったヴォイキツァは世俗に戻るつもりなのでしょうか。
余談ですが、神父はヴォイキツァの話から「30歳」ということでしたが、どう見ても50代位でした。何か意図があったのか? これが不思議でした。