劇場公開日 2012年12月15日

「面白かったドラマ版に対してあまりに残念な出来」映画 妖怪人間ベム よねさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0面白かったドラマ版に対してあまりに残念な出来

2019年1月17日
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鑑賞方法:映画館

アニメ版を再放送で繰り返し観ていた世代なので、TVドラマ化との報道を知った時にまたしょーもない企画をと憤りつつも第一回放映を小バカにするつもりで観たら、そこにあったのはオリジナルに対する敬意と人間の心に巣食う悪意に向き合ったちゃんとしたドラマで毎回ベムが怒りを爆発させるたびに涙を流す羽目になりました。そんなドラマ終了から一年、待望の劇場版に相当な期待を胸にシネコンの闇に身を潜めました。

正直がっかりしました。まずダメなのがドラマを観た人を観客に想定してること。ドラマ版との繫がりを一切説明しないのでドラマを観ていない人にはチンプンカンプン。次に映像が汚い。これは『ワイルドセブン』なども同じ印象だったのでわざとやってることなんでしょうか。そして演出が適当、特にアクションシーン。例えばベム達が誘拐犯を倒して少年を救出したところを警察に包囲されるシーン。いきなり一斉射撃って人質いるのにいくらなんでもそれはやらないでしょ?集客ターゲットが小学生から中学生くらいだからとタカをくくったのかも知れませんが、ちょっとこの手抜きは看過できません。

それとあとやっぱり演技に深みがない。もっとエグいくらいに人間の悪意を描かないと“お前らは人間のくせになぜそんなに醜いんだ?”という妖怪人間の憤りに繋がらない。今回の悪役は製薬会社の社長で、彼の悪事は重大な副作用のある薬品を自主回収しなかったということですが、それが原因で何が起こったかがどこにもないのでただのメガネのオッサンにしか見えません。

それでも少しは救いがあって、まずは亀梨君のストイックさと杏のオリジナルリスペクト、それと北村一輝のコケティッシュさ(この人は極悪人から超善人まで演技の振れ幅が尋常でないですね)がドラマの中心ゆえに全体的にそんなにブレないこと、観月ありさの妖怪ぶりがアホみたいにハマってて美しかったことですか。まあつまらないなと思いつつ都合3回くらい泣きました。ドラマが素晴らしかった分、この体たらくは残念でしょうがないです。

よね