狂気のクロニクル

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狂気のクロニクル

解説

チェコ・アニメーションの先駆的存在として数々の名作を世に送り出した巨匠カレル・ゼマンが、17世紀にヨーロッパ諸国を巻き込んだ30年間にわたる宗教戦争を題材に、アニメーションと実写の融合で撮りあげた長編作品。

囚われの身となってしまった農夫ピーターとその恋人の姿を通し、戦争の愚かさをシュールでユーモラスな語り口で描き出す。

2022年に特集企画「チェコ・ファンタジー・ゼマン!」で上映され、2024年に再び行われる「チェコ・ファンタジー・ゼマン!2024」(24年11月16~29日、新宿K's cinema)でも上映。

1964年製作/82分/チェコスロバキア
原題または英題:Dva musketýri
配給:アンダソニア
劇場公開日:2024年11月18日

その他の公開日:2003年8月30日(日本初公開)、2022年4月26日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

4.0ザ・喜劇。

2022年5月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

戦争ものによくある緊張感はゼロの、 完全なる喜劇。それでいて反戦映画。 不条理が不条理を呼び、はたまた不条理にも状況がひっくり返る、というのを延々と繰り返す、めっちゃ詰め込み型の脚本と演出がベストマッチで素晴らしい。 映像も凄いけど、アイデアも凄いいいね〜って感じで、とっても面白かったよ。

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胃袋

3.5タイトルに騙されるな。大いに愉快かつ痛快なドタバタスラップスティック歴史劇の佳品!

2022年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新宿K’sシネマのカレル・ゼマン特集上映二日目の3本目、通算6本目の視聴。 「17世紀ドイツの30年戦争を題材とした反戦映画」でこのタイトル。てっきり、重苦しい実験作のような、もっと毒とクセの強い奇怪な映画を想像していた。 実際に観た本作は、明らかに「無声映画時代のスラップスティック」への限りなき憧憬に満ちた、復古的で痛快無比なドタバタ・コスチュームプレイだった。 もちろん、そこにカレル・ゼマンらしい独特の作風とテイストがしっかり加味されているわけだが、映画自体はとりあえず構えないで楽しく観て十分おつりがくる、生粋の娯楽作である。 というか、サイレント活劇っぽい「おバカさ」を殊更強調し、誇張しているかのような作劇が目立ち、ある種の自己言及的な「サイレントのパロディ映画」に仕立てること自体が監督の真の狙いなのかもしれない。 ドイツ三十年戦争のさなか、とある農夫が徴兵隊につかまって、兵隊にさせられてしまう。 皇帝軍と王国軍に分かれて戦っているのだが、戦況は風見鶏のようにクルクル入れ変わり、優勢・劣勢の風向きが切り変わるたびに、主人公もまた流転する状況の渦中で翻弄される。 前半戦はかなりまったりしているというか、ちょっと眠たくなるような展開が続くが、主人公が仲間の飲んだくれ中年と脱走して、林檎を摘みに来たヒロインと出逢い、さらに三人が城に人違いで拉致されて拘禁されてからは、ドタバタ度とアクションが格段に増して、がぜん面白くなってくる。 剣の腕の立つ若くてハンサムな主人公と、味のある酔っ払いの「バディもの」としても楽しいし、道化に扮したヒロインの可愛さにもグッとくるものがある。 何より、ふつうに剣劇(殺陣)に見ごたえがあって、観ていて引き込まれる(こんな動的なアクションも演出できる監督だったのか)。 他の作品と比べて、アニメ要素や特撮要素はずいぶんと抑え目だが、「鳥の群れ」「本仕立ての語り口」「運命の転機を示す雷鳴と稲光」「散々逃げた先に海辺の断崖」「手に入れた財宝を仲間のために手放すイベント」といったゼマン印のシーンやアイテムはしっかり揃っている。 とくに、戦況の変化を表す「風」が、寓意的な男の顔(いわゆる「北風」や「西風」の寓意像)による息吹で表されているのがじつにゼマンらしい。 領主の城内では、バカな領主とバカな夫人とバカな娘とバカなグレートデンがいて、バカな近衛隊長とバカな画家とバカな手下たちがひたすらマウントをとりあっている。ただ「老道化」だけが知恵者である、というのが、ゼマンのつくり上げたコメディ世界の大いなる皮肉である。 敵方のみんながあまりにバカなので、三人は偽侯爵とそのお供としての厚遇を容易に勝ち取ることに成功するが、領主の令嬢を狙っている近衛隊長は何かと罠を仕掛けてくる一方、領主一家は侯爵に取り入ろうとあの手この手でサーヴィスの限りを尽くしてくる。しかし、三人の短く楽しい平穏なる日々は、皇帝軍の軍隊が帰還してきたことで儚くも終わりを告げる……。 さんざん気楽なドタバタと剣劇で愉しませたあと、道化に扮したヒロインが最上階の彫刻の間で体験する恐怖のシーケンスをはさんでくるあたり、ゼマンの作劇は実に巧みだ。 あそこで出てきていたのは、殉教聖女(聖ルチアなど)とシーシュポスの巨像、ガーゴイルに、ホロフェルネスとユディトの絵あたりだったか。いわゆる「怖い絵」「怖い像」を用いて不気味さを滲ませてくることで、ヒロインの怯えと恐怖が視覚化され、ぐっと作品の陰影が濃くなる。 一方、ラスト近くの兵隊との大立ち回りは、見ごたえ十分。酔っ払いがしゃっくりをするたびに「世界が揺れてモノが崩れて人が落ちそうになる」メタなギャグも面白かった。 前半のかったるさと、多少減速した感じの終わり方が、お話の組み立てとしてはしょうじき気になるといえば気になるが(いっつもゼマン映画って、結ばれたカップルが地平線の彼方に消えていくのねw)、60年代にこれだけ「それらしい」サイレント映画風の「取り違えギャグ」を成立させているだけでも十分観るに値するし、何よりギャグがそのまま「反戦」のシリアスなメッセージに直結しているのが素晴らしい。 まさに今、ロシアが引き起こした「愚かな戦争」を日々目の当たりにしながら、まかり間違えば「新たなる三十年戦争」に巻き込まれかねない今日この頃、心して本作が「笑いのめして」みせた戦争のくだらなさを、ぜひそれぞれの肝に銘じておきたいところだ。

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じゃい