「タイトルなし(ネタバレ)」終わりなし りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
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戒厳令下のポーランド。
ひとりの弁護士(イエジー・ラジヴィオヴィッチ)が急死した。
残された妻(グラジナ・シャポーフスカ)のもとに現れ、「私は四日前に死んだ・・・」と観客に語る。
死に関しては不審なことはなかった。
彼が携わっていた案件は、戒厳令下のストの指導者と目される男の弁護。
弁護の後釜を引き継いだのは、死んだ弁護士の師にあたる老弁護士で、彼は体制寄り。
残された弁護士の妻、拘留されているスト指導者とその妻及びスト仲間、後釜の老弁護士と、それぞれ異なる立場の物語が進行する・・・
といった物語。
あらすじ冒頭で「戒厳令下の」と書いたが、かなりの長期にわたって戒厳令が敷かれていたようで、もしかしたら解除された後の物語かもしれない。
それでも、社会主義国の息苦しさ、自由のなさが物語の背景から迫って来る。
『デカローグ』で描かれた各話のシンプルさと比べると盛りだくさんの内容で、キエシロフスキー監督作品の中でもっとも重厚。
政治背景的にはアンジェイ・ワイダ作品に通じる。
しかしながら、残された妻の前にしばしば現れる弁護士の姿は、ある種幻想譚めいており、他のキエシロフスキー監督作品のテイストが色濃く感じられます。
なお、ストの指導者の裁判、執行猶予付きの有罪で、彼は拘留を解かれるものの、それは負け戦であり、政治的には苦い敗戦です。
見応えある一編でした。
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