白痴のレビュー・感想・評価
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『ある街角の物語』をリスペクト。DNAは継続している。
『新しいメディアの開拓とは言うけれど、結局昔の映画には叶わない。』
と言われたとしても、この時から20年を経過してしまっている。
この演出家の一番の欠点は彼のDNAだと思う。
つげ義春、寺山修司、大林宣彦、坂口安吾等々をリスペクトしている。あのブレード・ランナーの世界から新しい世界へ生まれ変わるかに見えた。しかし、敗戦と言う日本国だけの特有な歴史観が残ってしまい、中途半端な世界観に留まってしまっている。やはり、ただの敗戦を憂え、そこからの再生を描くだけの映画のような気がする。
つまり、偉大なる芸術家のDNAを受け継いだだけで、全く新しいクリエーターとは言えないかもしれない。もっとも、能力は非常に高いが、彼自身がそれを理解していない。大変に残念な芸術家である。
私は坂口安吾先生の大ファンである。変なサイドストーリーを付け足すのではなく、ただ実写にするか、いっそのことミュージカルダンス映画にしてしまえば良かったのではないか?と感じる。御老体のCASTとか台詞を喋らない顔だけの主人公は要らない。寧ろ、軽業の出来るスタントマンを多用して、歌と踊りで日本の敗戦を喜ぶとかキャッチーで良いんじゃない♥
と20年前に言ってあげていたら、日本を代表する演出家になっていたかもね。しかし、歴史にたらねばは無い。
追記
石に顔を書くシーンは父親。若しくは『ブラック・ジャック』そして、火の鳥の猿田彦。背後のふすまには『三つ目がとおる』石は『酒船石』か『石舞台』
そして最後にムソルグスキー作曲『展覧会の絵』の『キーウの大門』さて、誰もが現状の予見と想像するだろうが、実は手塚治虫先生は『展覧会の絵』をアニメ化している。だから、『ある街角の物語』で始まり『展覧会の絵』で終わる。DNAを見事に継承していると感じる。
再生で終わるのだが、『火の鳥未来編』から『ブッダ』とは!
監督も安吾ファンですよね?
オリジナル要素が加えられているものの、原作小説のベースを変えずに忠実に再現されていて好感が持てる。小説の文章を多めに引用してるのも良い。
伊沢の耳を切るシーンは『夜長姫と耳男』から来てると思うので、オリキャラ銀河嬢は夜長姫的要素も入っているのかな。(でも夜長姫にしては安っぽいから他作品の要素もありそう)
若き浅野忠信が素敵すぎる。演技が上手いのはもちろん雰囲気がぴったり。雰囲気まで創れる役者さんってすごい。白痴の女役の人もめちゃ良かった。
安吾作品によく出てくるキーワード「ふるさと」も盛り込まれてましたね。銀河ちゃんの男の覚悟の話と木枯じいさんの石の顔の話は元ネタありそうだけど分からなかった。首吊りの描写もどこから来たのか謎。
小説をそのままビジュアル化したような空襲のシーンは圧巻でした。そして海を見つめる二人、映画らしく少々ロマンチックになってますが、空襲の非日常と共に情熱は消えてしまったのです。
ラストは安吾先生の後ろ姿ー!!!
愛しかない!!!!
【坂口安吾の小説について】
安吾の純文学や幻想文学系の作品は1作だけ読んでも意味が分からないですが、エッセイを何作か読むと彼の思想が分かってくるので、小説もより楽しめると思います。そして坂口安吾の虜に…
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