「思いのほか見入ってしまった」「A」 ma-rusukeさんの映画レビュー(感想・評価)
思いのほか見入ってしまった
テレビ局より小型のカメラだろうし古い映像で退屈かと思ったが、思いのほか見入ってしまった。私にとってオウム真理教の一連の事件は宗教に対する印象に大きく影響していると感じた。
作品は主に広報部を撮影しており、事件の当事者は登場せず、事件の内容については説明されない。閉鎖や移転に追い込まれていく施設の映像は大きな部室のように感じた。
教団が大きくなっていく過程で信者にとって教祖はどういう存在だったのだろうか。仏教のロジックで身の振り方を説明するのがとてつもなく上手だったのか、盛り上げ上手なイベンターだったのか。
事件が明らかになっていく過程で、信者たちは教義を従来通り信仰するのか、自身の中で何らか折り合いをつけていくのか気になった。映る人々は脱会せずに継続している人ばかりだろうからなにかロジックがあるのかもう戻るところがないのか。
強制的に連行しようとする警官や、一方的な意見を相手のためでもあるかのように投げかける市民、家族を後継者にしてしまう教団、なんだかなぁと思うけれど、似たようなことは今もこれからも繰り返されていくのだろう。
新聞やテレビの取材と揉める一方で長期間内部に入り込み、インタビューができているのは信頼が醸成されていたのだろうと思う。そのためオウムよりの作品に見えるし編集により監督の思想も反映されているだろうが、それでも貴重な記録だと思った。
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